『光の玉』によって、制御された地下世界。
大魔王ゾーマの呪縛から解き放たれた、アレフガルド大陸。

勇者アイリの仲間、商人ミーナは、
吟遊詩人ガライやミニモン(ミニデーモン)と共に、
町作りに励んでいた。
<1>
「ガライはんって、色白やな〜〜。
 ほんまに、男にしとくの惜しい位、キレイやわ……。」

光に照らされて初めて解かる、アレフガルドの住民の肌色。
ミーナは、容姿端麗なガライを見て、素直な感想を述べる。
彼は苦笑して、答えた。

「……ははは。
 ミーナさん、有難うございます。」

ミーナは周囲を見回し、首を傾げた。
「そういえば、グレイはんは、何処行きはったん?」
「それがですね〜〜……。」
頭を掻きながら、ガライが『グレイのその後』を解説し始めた。

「失恋のショックで、立ち直れてないというか……。」
「そうやなぁ。
 グレイはん、かな〜り、アイリに惚れてたんやもん。」

だが、そのアイリが愛しているのは、アクシズだけだ。
他の者がどんなに頑張っても、行き着けない世界が其処にある。
グレイはソレを理解してはいるものの、『負けず嫌い』な性格から、
未だに彼女を諦めきれないでいた……。
2人は項垂れ、大きくため息をついた。

周囲では、ガライを慕って集まった人々が、開拓作業に励んでいる。
商人ミーナは腕を組み、考え事をするように俯く。
「どうしたんですか?」
問うてくるガライに、ミーナが思考の内容を言葉にして返す。
「建設に携わる人間が足りないっちゅうか……、
 今一、作業効率が上がらへん……。」

__これは、一度『地上界』に戻って、現場監督を呼ぶ必要があるな〜〜。

スー開拓村の件でお世話になった専任の現場監督を思い出し、
ミーナは納得して頷いた。
一方、ガライは吟遊詩人ゆえ、
解からないのか不思議そうに彼女を見つめている。

「ウチ、一旦、地上界へ戻るわ。」

笑顔になり、ミーナは言った。
驚愕するガライに、彼女は更に続ける。

「大丈夫やって、直ぐにココに戻ってくるから♪」
「……でも。」

彼は狼狽したが、決断の早い商人の言うことだ。
ミーナは、さっさと道具袋から『キメラの翼』を取り出し、
天へ向かって放り投げた。
彼女の足元に、瞬間転移呪文『ルーラ』と同じ魔法陣が描かれ、
その身が転送される。

「ミーナさん!!!!」

叫ぶが時既に遅し、ミーナは地上界に戻ってしまった。
ガライは、無意識に差し出していた手を元に戻し、嘆息する。

「何だ。彼女(ミーナ)に逃げられたのか?」
気が付けば、彼の後にグレイが立っている。
ガライは彼に向き直り、首を横に振った。
「違いますよ。 直ぐに戻ってくるって言ってましたから。」
「喋らなければ、『いい女』なんだけどな。」
グレイが面白そうに笑みを浮かべ、ガライに視線を移す。
すると彼は、赤面して俯いてしまった。

だが、彼女の転送された場所は、意外な所だった。
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