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地上界。
ダーマ神殿。

「アクシズ……。
 パーティを再編成した方がいいと思うの……。」

真剣な面持ちで、勇者アイリは勇者アクシズに語りかける。
荷物を持ち掛けた彼の手が止まる。
徐に腰を上げ、アクシズはアイリの瞳を真っ直ぐ見つめた。
少女の瞳が揺れる。

……と。

アイリは、甘えるようにアクシズの胸に顔を埋めた。
彼は少女の小さな背中に腕を回し、強く抱き締める。
腕の中のアイリを見つめ、アクシズは苦笑する。
いじらしくも彼女は、自分と離れてしまう事を案じているのだ。

その時だった。

「アクシズ。
 久し振りにダーマに戻ったらしいな。」

ダーマ大神官バサラが、休憩室に入ってきた。

アクシズは狼狽し、咄嗟に身を離そうとアイリの両肩に触れるが、
彼女は彼の胸にしがみついたまま離れない。
今度は大神官バサラは狼狽する。

「お邪魔だったかな?」
「……お邪魔というか……その……。
 ……少なくとも、タイミングは凄く悪いです。」
「うむ。
 (アイリが)落ち着いたら、もう一度来るとしよう。」

部屋から出ようとバサラがドアノブに手を掛けた時、
アクシズとの抱擁から、やっと身を離したアイリが、彼を呼び止めた。
彼女の顔は、恥ずかしさの余り、耳まで真っ赤になっている。

「ご、ごめんなさい!!
 もう、大丈夫です……!!」

一体何が大丈夫なのか解からないのだが、
彼女自身気が動転しているのは確かだった。

「氷、持って来ようかの?」

呆れたように苦笑する大神官バサラに、
アイリは両掌を大袈裟に振りながら、慌てて拒否した。
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『DQ3』外伝CONTENTS