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__あいつが『ロト』か……?

……いや、違うだろう。
上空で勇者オルテガの動向を見守っていた『死の天使アズライル』は、
剣を腰に掛けた鞘に収め、舌打ちした。
今現在の彼は、透明呪文『レムオル』で姿を消している為、
人間の肉眼では姿が見えない。

『ロト』の称号とは、地下世界に伝わる『真の英雄』の証。
天界の王・ゼニスに向かって謀反を起こした首謀者『死の天使サムエル』は、
その『ロトの魂』が必要だと告げた。
だが、下界には『勇者の魂』となる勇者が3人存在する為、
片っ端から当たるしか道は無い。

__これなら、アスラゾーマの件も眉唾物ではなさそうだな……。

勇者オルテガの超人的な強さを思い出し、
アズライルは冷たく微笑する。

__さて、戻るか……。

『レムオル』継続中の状態で、アズライルは瞬間転移呪文『ルーラ』を詠唱し、
元の持ち場に自分の身を転送する。

「……?」

呪文詠唱が聞こえたのか、僧侶リオは天空を見上げた。
だが、何も無い……。

「どうした?」

不審に思った勇者オルテガが、彼女に問う。
リオは頭を横に振って、気を取り直した。

「さっき、呪文詠唱の声がしたと思ったのですけど……。
 気の所為みたいでしたわ♪」

彼女の言葉に、オルテガの顔色が変わる。
やはり、上空に何かが居たのだ。
しかし……。
相変わらず気楽なリオには、それすらも解からないらしい。

この御気楽美少女の反応が、戦闘時以上の疲労を誘う。
オルテガは嘆息し、項垂れた。
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『DQ3』外伝CONTENTS