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__厄介な事になったな……。 天界。 コロシアムの真ん中に立ち、エビル(バラモスエビル)は拳を握り締める。 傍らには、スラリン(スライム)も一緒だ。 彼等の前には、翼を持つ天空人が立っている。 神から授かった筈の瞳は、冷たい威圧感を放っていた。 彼が決して味方では無いことは、微量の殺気から理解出来る……。 エビルは出来るだけ平然と、彼に語りかけた。 「智天使ケルビンから聞いた……。 お前は、ゼニス王に追放された堕天使サムエルだな……。」 「……勘違いするな、エビル。 私は『まだ』堕天使ではない……。」 自らの翼を広げ、サムエルは天空人の証を見せる。 堕天使とは、罪を犯した天空人が翼を失い、下界に追放された者の事を指す。 事実、『死の天使』達は『堕天使候補』として名を挙げられているものの、 未だ姿は天使のままであった。 __ゾーマの『予言』も、早すぎる……。 自然にエビルの額に、汗が浮かぶ。 しかし未来は無限に存在し、預言者とて全てを見られるわけではない。 大魔王ゾーマも『何が見えたのか』までは言っていない。 事実、全てを予知出来たら、彼等は生きる意味を見失うであろう。 「我が力に屈せよエビル。」 地から響くようなサムエルの言葉に、エビルは戦慄した。 冷酷な死の天使は、まるで蝋人形のように表情を変えない。 そして、まるでエビルの心を見透かしたのように、冷たく嘲笑する。 「いくら待っても、『勇者』達はココへは来れん……。」 「どういうことだ……!!?」 問い質そうとするエビルの服裾を、スラリンが口で必死に引っ張る。 「……どうした?」 「エ、エビル。 アレ、アレ……!!」 スラリンは、下界の方を(指が無い為)頭上の突起を使って指す。 彼の目線を追って、エビルも愕然となる……!! 何と、天界コロシアムの真下は、複雑にダンジョン化し、 下界の者達が、容易に浸入出来る状況では無かったのである!! |
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