<2> | ||
地下世界同様、平和に包まれた地上界。 勇者達の活躍により大魔王ゾーマが倒されてから、 人間達は日々の不安から解放され、平穏な生活を送っていた。 ……英雄である、勇者達を除いて……。 「どうしよう……。 このまま『卵』が見つからなかったら……。」 こうなってしまったのもゾーマ討伐で、地上界を守る筈の勇者達が全員、 地下世界に行ってしまったからである。 自責の念にかられ、アイリは唇を噛み締めた。 今現在、勇者アクシズと勇者アイリは、共にダーマ神殿の休憩室にいる。 平和になった影響で、転職者が少ないのか、誰もいない。 賢者ディートは、2人に紅茶を振舞うと、自分もソファーに腰掛けた。 「あの〜〜。 僕、1つどうしても気になることがあるんですが……。」 賢者の疑問に、勇者2人が注目する。 「『卵』の父親って、いったい誰なんですか?」 意外な質問だった。 アイリも顔を上げ、彼と同じ事を問うた。 「そうね。 アクシズ、知ってるの?」 竜の女王とて、1人で『卵』を産める筈がない。 彼女に夫が存在するのは自然の成り行きであり、当然の事である。 それに夫が亡き妻に代わって『卵』を連れて帰った可能性がある。 過去、竜の女王の城に2年間滞在していたアクシズである。 賢者であり幼馴染の優秀さに驚愕しつつ、彼は答えた。 「全てを統べる竜神、『神竜』だ……。 ディート。 本当、お前って、頭いいよな……。」 __俺も平和ボケしてる……。 項垂れるアクシズを見つめ、アイリは苦笑した。 大事な事に気付かなかったのは、彼女も同じだ。 「竜の女王様の『卵』を返してもらうの?」 「いや。一応確認してからだ。 今から、実際に『神竜』に会いに行き、確かめる。 もし『神竜』の所に『卵』があれば、返される必要ないだろうし……。」 「もし、『違った』ら……?」 心配そうな表情で問うアイリに、アクシズは嘆息すると強く答えた。 「『取り戻す』しかないだろ……!!」 |
||
■次へ ■前へ ■『DQ3』外伝CONTENTS |