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地下世界同様、平和に包まれた地上界。
勇者達の活躍により大魔王ゾーマが倒されてから、
人間達は日々の不安から解放され、平穏な生活を送っていた。
……英雄である、勇者達を除いて……。

「どうしよう……。
 このまま『卵』が見つからなかったら……。」

こうなってしまったのもゾーマ討伐で、地上界を守る筈の勇者達が全員、
地下世界に行ってしまったからである。
自責の念にかられ、アイリは唇を噛み締めた。

今現在、勇者アクシズと勇者アイリは、共にダーマ神殿の休憩室にいる。
平和になった影響で、転職者が少ないのか、誰もいない。
賢者ディートは、2人に紅茶を振舞うと、自分もソファーに腰掛けた。
「あの〜〜。
 僕、1つどうしても気になることがあるんですが……。」

賢者の疑問に、勇者2人が注目する。

「『卵』の父親って、いったい誰なんですか?」

意外な質問だった。
アイリも顔を上げ、彼と同じ事を問うた。

「そうね。
 アクシズ、知ってるの?」

竜の女王とて、1人で『卵』を産める筈がない。
彼女に夫が存在するのは自然の成り行きであり、当然の事である。
それに夫が亡き妻に代わって『卵』を連れて帰った可能性がある。
過去、竜の女王の城に2年間滞在していたアクシズである。
賢者であり幼馴染の優秀さに驚愕しつつ、彼は答えた。

「全てを統べる竜神、『神竜』だ……。
 ディート。
 本当、お前って、頭いいよな……。」

__俺も平和ボケしてる……。

項垂れるアクシズを見つめ、アイリは苦笑した。
大事な事に気付かなかったのは、彼女も同じだ。

「竜の女王様の『卵』を返してもらうの?」

「いや。一応確認してからだ。
 今から、実際に『神竜』に会いに行き、確かめる。
 もし『神竜』の所に『卵』があれば、返される必要ないだろうし……。」

「もし、『違った』ら……?」

心配そうな表情で問うアイリに、アクシズは嘆息すると強く答えた。

「『取り戻す』しかないだろ……!!」
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『DQ3』外伝CONTENTS