『お前達……。少々、乱暴が過ぎるぞ……。』

『氷の洞窟』最深部。
忠誠の証として、自分に捧げられた『竜神の卵』を目にし、
ヒドラ族の長であり、魔界の守護神グランドラゴーンは嘆息する。
彼の御前には、4人の堕天使候補達が揃っていた。
<1>
「どうすんのよ。
 やっぱり、怒られちゃったじゃないの……!!」

傍らの鳳凰の喉を撫でながら、死の天使『ガブリウル』が不貞腐れる。
彼女は美しい容姿と実力を持ちながらも、残忍な性格であった為、
天界のゼニス王に追放された堕天使であった。

自分の剣を磨いていた、死の天使『アズライル』が顔を上げ、
面倒くさそうに彼女に問いかけた。
彼も、冷酷非道な性格から、追放の身となっている。

「……じゃあ、お前。
 今から『卵』を返しに行ってくるか?」

「バッカじゃないの!!?
 そんな、面倒くさいこと出来る訳じゃない!!!!」

腰に両拳を当て、ガブリウルは断固拒否する。

「今まで、ゾーマの奴が『魂』を喰らってくれたおかげで、
 私達の仕事が減ってしまいからね。」

死の天使『ミハエル』は、男性の声で女性のような仕草を取る。
彼は『両性具有』であり、男でも女でもある……。

彼等は元々、死んだ人間達の『魂』を管理する立場にあり、
『魂』管理に耐える為『冷酷な性格』を植えつけられている。
だが、今まで大魔王ゾーマが『魂』を喰らい、『魂の昇天を妨げていた』為、
暇を持て余していたのである。

「『竜神の卵』は、このままココに置いておく……。」

声に3人の天使達が振り向く。
首謀者である死の天使『サムエル』は、
人智を超えるような落ち着き振りで、『卵』を見据えた。

「ココは『とある条件』を揃えなければ、
 下界の人間達は侵入することすら儘(まま)ならない。
 言い換えれば、天空人達も侵入不可ということになる……。」

「アンタ、何処行くのよ?」

踵(きびす)を返し去っていこうとするサムエルを呼び止め、ガブリウルが問う。

「何。たった一人、我が力に屈しない者がいるのでな。
 もう一度試してみるだけだ。」

彼は振り返り、冷たい瞳で微笑した。
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