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地上界にて、天界に一番近い城。
『竜の女王の城』。
白亜の城が聳(そび)え立ち、太陽光に照らされ輝いている。
三種の竜神のレリーフは、
神竜、地竜ヴァンベルト、天竜クラインのものだと、
以前、エビル(バラモスエビル)から伺っている。

「エビル、元気かしらね……。」

魔物でありながら、人間の味方をし、
勇者2人の良き理解者であった仲間のエビルを思い出し、
アイリは自分の先祖のレリーフを見つめた。

城内に入ると、やはり竜神の子孫だということで、
勇者2人は歓迎を受けた。

「竜の女王様が亡くなって、この城も寂しくなったものですよ。」
御付きのホビットが、彼等に向かって話し掛けて来る。
彼の事をよく知るのか、アクシズは嘆息した。
「相変わらず、お喋りだよな、お前は。」

「お喋りとは失礼な!!!!
 私は、女王様がお産みになられた『卵』が
 『突然消えた』ことなど一言も言って無いし、
 『卵』が変な天使に持って行かれたという目撃情報も漏らしてません!!!!」

「思いっきり、情報漏らしてんじゃねえか!!!!」

アクシズはいきり立って、お喋りホビットの胸倉を掴んだ。

「アクシズ様〜〜。
 乱暴は、いけません♪」
彼は、引きつり笑いを見せ、調子良く言う。
アクシズは大きくため息をつくと、彼をその場に下ろした。

だが……。
アイリだけは顔面蒼白になり、
弾かれた様に女王の間へ向かって駆け出して行く……!!
部屋に着き、目を疑うような光景に彼女は愕然となる。

__そんな……。

生前、女王のいたベッドの上には『何も』無かった。
ベッドの布団は、卵の沈んだ跡だけ残し、それ以外は『何も』存在しない。

「アイリ……。」
自分を追ってきたのであろう。
アクシズに声を掛けられ、アイリは徐に振り返る。

「竜の女王様の『卵』が……。
 無くなってるの……。」

瞳に涙を浮かべ、彼女は耐え難い事実を、彼に告げた。

大魔王ゾーマがいなくなり、平和になった筈の世界で、
一体何が起きているというのであろうか……!?

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