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「アイリ……!!」

アリアハン城下町に在る、アイリの生家。
自分の名前を叫ぶ、彼の声がする。
アイリが、重たい瞼を開けると、光が差し込んできた。
視界に入ってきたのは、懐かしい天井と、心配そうなアクシズの顔。
上体を起こすと、突然アイリは彼の胸にしがみ付き、声を上げて泣き出した。

悪夢でも見たのだろうか……?
子供のように泣く少女の背中を優しく撫でながら、
アクシズはふと窓の外に目をやる。
今は昼だ。
……と、いうことはアイリは気を失ってから、そんなに時間が経っていない。
何かが、おかしい……。

「行かなければ……。」

不意に、腕の中のアイリが呟いた。
徐に彼から身を離し、何かに取り憑かれた様に、立ち上がる……!!

「行くって何処へ!?」
アクシズが問うと、アイリは虚ろな表情で答えた。

「『竜の女王』の城……。」

__何だって!?

『竜の女王の城』といえば、地上界にて天界に一番近い場所である。
その名の通り、竜の女王が治める城であったのだが、
女王は崩御(死亡)されてしまっている。
彼女の忘れ形見である『卵』をのこして……。

「……『卵』……!?」

アイリは気が付き驚愕する。
竜の女王の残せし『卵』は、あの時以来『無防備』に置き去りになっている!!
今までの胸騒ぎを思い出し、アイリは自分の胸を押さえた。
ただならぬ彼女の様子に、アクシズは嘆息し項垂れた。

「この分じゃ、俺達の『結婚』は延期みたいだな……。」
「ち、違うの!!
 コレは夢の中で精霊様が……!!」
ボソッと呟く彼の声が聞こえたらしい。
アイリは、慌てて言い訳した。

「……私だって、直ぐにでもアクシズの『お嫁さん』になりたいの!!
 母さんにお料理習って……。」
その台詞を聞いて、アクシズの顔が引きつる。
勇者として生まれ育った為、アイリは『花嫁修業』が出来ていないのだ。

「……まあ、急がなくていいから……。
 地道に頑張れば……。」
「ひど〜〜い!!
 アクシズは、私が『家事』出来ないと思ってるのね!!!!」

そこへ偶然、アイリの母・ルシアが通りがかる。
「あらあら、痴話喧嘩かしら?」
彼女に不敵に微笑まれ、2人は怯んだ。
オルテガが帰宅して以来、ルシアの表情も明るい。

だが……。
アイリは嘆息すると、何処までもままならぬ自分の運命を呪った。
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『DQ3』外伝CONTENTS