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__……ここは? 気が付けば、森の中に居る。 木漏れ日が揺れる。 誰かの呼ぶ声がする。 __私、夢の中にいるのね……。 アイリは、上体を起こすと、徐に立ち上がり周囲を見回す。 彼女の16歳の誕生日、バラモス討伐の旅立ち前夜に見た夢の光景だった。 だとすれば、この先には『雨の祠』で出会った精霊が待っている筈である。 誰も居ない、森の中を進む。 しばらく行くと、滝が見えてきた。 しかし、滝の流れる『音』は無い……。 『アイリ……。 驚かせてごめんなさい……。』 澄んだ美しい声が、彼女に優しく陳謝する。 精霊はアイリが精霊神ルビスの触媒になって以来、 彼女の思考の中に潜り込めるらしい。 『でも、今の貴女の名前は[ロト]……。 聖なる名を授かった真の勇者。』 急に思考に潜られたことに、アイリは困惑していた。 だが、ココは思考のみで動く夢の世界故、隠すことが不可能であった 事実、本音が全て声に変換され、精霊の元へ伝えられていく……!! 「どうして、貴女方に言われたとおり、 大魔王ゾーマを倒したのに、ずっと『勇者』でいなければいけないのですか……!? ……アクシズが、私をお嫁さんに貰ってくれるって、言ってくれたのに、 やっと、彼と幸せになれると思っていたのに……。 ルビス様は、ゾーマを倒した暁にはお礼しましょうと言ったのです。」 夢でありながら、彼女の頬を涙が伝う。 感覚は、まるで現実世界と変わらない。 これは、一体どういう事なのであろうか……!? 『アイリ……。 [竜の女王]の城へ向かいなさい……。 訳は、行けば解かるでしょう。』 「貴女は、何者なんですか……!?」 世界が消えそうになる。 アイリは必死に精霊の声に向かって訴えていた。 だが、声も、思考のみに変化していく……!! __この『世界』は、本当に『夢』なのですか……!? しかし、自らの思考に問いかけても、自らの解釈しか出来ない。 夢は闇となり、瞼越しの闇へと返る。 |
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