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「一旦、地上界へ戻った方がいいわよね。
 どっちにする?」

アイリがアクシズに問いかける。
彼女の言う『どっち』というのは、
『サマンオサ』か『アリアハン』のどっちかということなのだが。
彼女の質問に、アクシズは思わず狼狽した。
彼等は共に一人っ子であり、長男長女同士。
地上界へ戻れば、どうしても、『お家問題』が絡んできそうなものである。

そんな彼の悩みに気付かず、アイリは俯き加減になりながら、
小さい声で語り続ける。

「……私ね。ずっと夢だったの。
 『お嫁さん』になること。
 この旅が終わったら、貴方のお嫁さんになりたい……て、
 ……ずっと思ってたから。」

もちろん、彼女はロマンチストな性格故、
普通に『花嫁衣裳を着た自分』を夢見ているのだが、
男性であるアクシズの方は、現実的に考えてしまっている。

__この場合、アイリを『サマンオサ』に連れて行くのが『普通』だよな……。

腕組して賢明に考え込む恋人の姿に、アイリは怪訝そうな表情をした。
そして、不機嫌になる。

「もう……!!
 ちゃんと聞いてよ!!!!
 ア・ク・シ・ズ……!!」

気が付いて振り向くと、アイリが頬を膨らませ、自分の袖を引っ張っている。
その仕草が可愛らしい……。
アクシズは苦笑すると、愛しい少女を抱き寄せた。
彼の胸に身を預け、アイリは素直に瞳を閉じる。

「言ったよな……。
 ……もう、絶対、離さないって……。」

耳元で、彼が優しく囁く。

「……うん。」

素直に頷く彼女の瞳を真っ直ぐ見つめる。
そして。

「結婚しよう。」

「……!?」

間近ではっきり宣言されたものの、未だ信じられないのか、
夢でも見るように呆然と、アイリはアクシズを見つめた。
段々、頬が熱くなる……。

「アクシズ……?」

彼女の瞳に涙が溢れる。
声を出そうにも、涙で声にならない。

アイリは、アクシズの胸に顔を埋め、大きく頷くと涙が止まるまで待った……。
だが……。
なかなか、涙は止まる気配を見せなかった……。
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『DQ3』外伝CONTENTS