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地上界。
今は塞がってしまった『ギアガの大穴』の隣に位置する、
『バラモス城』。

__……。

勇者アイリの監禁先と選ばれた場所は、この城だった。
意外にも綺麗に整理された地下牢の一室。
彼女はココのベッドで寝かされており、
まだ『ラリホー』の効果が解けぬ状態であった……。

「……アクシズ……。」

寝言で、愛しい恋人の名を呼ぶ。
頬を一筋の涙が伝い、アイリは、ゆっくりと瞳を開いた。

「よっぽど、好きなのね。
 あのカッコイイ赤毛の剣士のこと。
 何度も、寝言で言ってたから覚えちゃったわよ……。」

不意に話しかけられ、上体を起こし、声のする方へ向くと、
鉄格子の向こうで死の天使ガブリウルが、
腕組みしながら勇者アイリを見ている。

「剣士じゃないわ……。
 アクシズは『勇者』よ……。」
「そうだったんだ。そりゃそうよね。
 彼も『勇者の魂』だもんね。」
「堕天使候補なんですってね……。」

普通に自分に語りかけるアイリに、
ガブリウルは嘆息し、面倒くさそうに頷いた。

「まだ、翼が有るから『堕天使』になってないけどね。」

「『人間』になるのは、嫌?」

「嫌よ。だって、直ぐ死んじゃうもん。」

「でも、『私達』の好きになった『アクシズ』は『人間』なのよ?」

ガブリウルは驚愕する。
お互い、敵であり、恋敵である筈。
だが、アイリは『私』という言い方をしなかった。

「……呆れた。
 あたしに気を遣っているの?」

返事の代わりにアイリは俯く。
そして、ゆっくり掛け布団を掴む。

__彼は、人質になろうとした私に「やめろ」と言ってくれたから……。
   『勇者』としての使命より、『私』を選んでくれたから……。
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『DQ3』外伝CONTENTS