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天界。
ゼニスの城。

智天使ケルビンの3問目の答え。
『賢者の石』を持ち帰った勇者達は、城内に戻っていた。

ただし、勇者アイリを除いて……。

「いや〜〜〜、お見事でした♪
 コレで、神竜様に会う資格が出来たってものですよ!!
 ……?
 どうしたんです?
 1人足らない気がしますが……。」

智天使ケルビンの称讃の言葉と、素朴な疑問に、勇者アクシズは俯き黙る。
賢者ディートとスラリンも、困惑した表情で互いに顔を見合わせた。

本当なら、神竜に会って『竜の女王の卵』の所在を確認するだけで、
彼等の旅は終わる筈だった。
「アクシズのお嫁さんになりたい」と言っていたアイリの小さな夢も、
叶えてあげられる筈だった。
アクシズの握り締めた拳に、血が滲む。

「ケルビン……。」
「はい?」

喉の奥から出る重たいアクシズの声に、ケルビンが狼狽する。

「死の天使の本拠地は、解かるか……?」

「そ、それは、何とも解かりかねますが……。
 でも、神竜様の叶えられる『願い』で、解かるかもしれませんね……。」

「案内しろ……。」

「へ?」

「今直ぐ、案内しろ!!!!」

やり場のない怒りをぶつけるかの様に勇者アクシズは、
智天使ケルビンの胸倉を掴み、詰め寄った。
衝撃で丸眼鏡がずれ、智天使が狼狽する。

「約束したんだ……。
 絶対に、離さないと。
 ずっとアイリの傍にいてやると……!!」

……だが、『勇者』として人命救助優先の為、
アクシズとアイリは、『自分の希望』を抑えてしまう癖が抜けない。
……勇者としては、それで、良かったのかもしれないが……。

「……捕らわれたんですか?」

真面目な表情で、ケルビンが問う。
この質問で場が沈黙し、空気が重くなる。
やがて意を決した智天使ケルビンは丸眼鏡を直し、
姿勢を正すと勇者達に向き直る。
そして、重要な言葉を告げた。

「案内しましょう。
 一刻を争う事態のようです。
 ですが、今は抜けてしまった『勇者アイリ』さんの代わりの方が必要です。
 誰でもいいですから、1人。
 仲間を連れてきて下さい。
 でなければ、神竜様には勝てません。」
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『DQ3』外伝CONTENTS