<4>
「アイリ!!!!」

「アクシズ、落ち着いて下さい……!!」

引き離され、アイリを失って冷静さを失い、
死の天使達がいなくなっても絶叫するアクシズを、
瞳に涙を溜めたディートが、彼を捕まえる腕に、
懇親の力を込めて止める。

時間が経ち、次第に落ち着きを取り戻すが、
今度は絶望感が襲い、ガクッと床に膝をついて項垂れる……。

勇者であるが故、止められなかった自分に対する悔恨の念と、
死の天使達への憎悪と、最愛のアイリを失った絶望。

「……。」

アクシズは、負の感情で押し潰されかけた自分を、必死で押さえ、徐に立ち上がる。
その様子に気付いたディートとスラリンが、彼に注目する。
痛みに悶えながら、騒動の発端となった天文学者ガルレオも、
悲哀の目で彼を見ていた。

__そうだ……。
   俺は『勇者』だ……。

勇者であるアイリにとって、アクシズは『たった1人の勇者』だった……。
どんなに力が強くあっても、彼女の『心』はそうではなかった。
彼が今まで守ってきたものは、彼女の『か弱い心』だったのだ。

「アクシズ……?」

心配そうに、ディートが彼の名を呼ぶ。
そんな幼馴染に、アクシズは静かに問いかける。

「ディート……。
 これから俺は、どうすればいい……?」

「……そうですね。
 アイリさんを助けるにも、場所が解かりません……。
 でも、神竜ならば願いを叶えてくれると……。」

「……そうだな……。
 ありがとう……。」

自分が情けない事を言っているのは解かる。
聞かなくても、解かっている事を聞いているのは解かる。

__俺は、少し……混乱しているんだ……。

額に手を当て、アクシズは俯いた。
次へ
前へ
『DQ3』外伝CONTENTS