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「……こういう場合、
 『本物は何処だ!?』……って聞いてくるものだよな。」

言って死の天使アズライルは、顎を動かし合図する。
一同が注目する部屋の奥には、
死の天使ガブリウルの鞭に縛られた天文学者ガルレオの姿が……!!
気絶しているガルレオの横で、面白そうに死の天使ミハエルが微笑している。
先回りしていた死の天使達に驚愕しつつ、アイリは学者の名を呼んだ!!

「ガルレオさん!!」
「お〜〜っと、動いちゃ駄目よ!!!!」

駆け寄ろうとしたアイリを、ガブリウルが鞭に力を込め止める。
人質となっていたガルレオが、苦痛に呻いた。

__……!?

その光景に愕然となったアイリの足が、止まる。
怒りに震え唇を噛み締めつつも、
人質を取られ、非常になれぬ勇者達は動けない……!!

アクシズは、死の天使達に要求を聞こうとして……、しかし、口を閉じる。
彼等が何を欲するのか、頭では解かっている。
だが、首を横に振って、その思考を必死に否定する。

__駄目だ……!!
   それだけは、絶対に駄目だ……!!!!

彼女だけは……!!
アクシズは、世界よりも、命よりも、自分の一番大切なアイリに視線を移す。
自分の『お嫁さん』になりたいと言っていた、彼女の言葉を思い出す。
しかし、その前に、彼等は『勇者』なのである。
何より人命救助を最優先させ、私情を持ち込んではならない……!!
かつて、彼の父・勇者サイモンがそうであったように。
だが……。

「『ロト』は慈悲深い存在ではなかったのか?」

無情なアズライルの言葉に、アイリの表情が凍りつく。
だが、真剣な眼差しに戻ると、
意を決し、彼女は彼等に向かって静かに問うた。

「『私』と、交換したいのよね……?」

__……!!!!?

アイリの言葉に、アクシズが愕然となる。

「やめ……。」

言いかけて、袖を掴まれ、彼女の唇で口を塞がれる。
目を見開き絶望感で呆然となるアクシズに、アイリは優しく微笑んだ。

「私も『勇者』なの……。
 前は貴方が犠牲になって人質となったリリムを救ってくれたもの……。
 あの時私は、怖くて貴方のような勇気が持てなかった……。
 でも今は、それが出来る。」

次に、彼女は普通の少女に戻り、切な気に瞳を揺らす。

「……アクシズ……。
 ……助けに来てね……。」

お互いに絡めた指が離れ、踵を返すと、
アイリは徐に死の天使達の方へ歩み寄る。

アズライルは勝ち誇ったように嘲笑すると、
無抵抗の彼女に向かって手を翳(かざ)し、
睡眠呪文『ラリホー』を詠唱する。
崩れ落ちるように倒れる彼女を、ミハエルが受け止め抱かかえる。
ガブリウルが、学者ガルレオを解放し、床に叩きつけた。

そして、死の天使達は、
アズライルの瞬間転移呪文『ルーラ』詠唱で、
その場から消えた……。
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『DQ3』外伝CONTENTS