『勇者アイリ。
 たかが人間が、神の力を持つのは自然に反するとは思わぬか?』

アスラゾーマは、『覚醒』した勇者アイリに語りかける。
徐に彼女に歩み寄り、正面で対峙する。
大魔王の巨体に見下ろされている華奢な少女。
だが、仲間達の瞳には『彼らは同等』に映った。
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「……。」

無言で睨みつける。
アイリのオーラが更に勢いを増し、風圧で埃が舞う……!!
仲間達は、巻き上がる埃を手で覆い避けながら、彼女等の動向を見守る。

__なるほど。隔世遺伝か……。

こんな『小娘』が、面白い……。
アスラゾーマは、微笑した。

地竜ヴァンベルトからの『隔世遺伝』。
『隔世遺伝』とは、親の持つ遺伝子より、
先祖の持つ遺伝子の影響が、孫の代で強く現れる現象である。
つまり彼女は、他の勇者達より、竜神の血が濃いことになる。

__ルビスも、面白い仕掛けを施したものだ。

アイリの誕生日は、アレフガルド暦に直すと、
『王(キング)の年』、『王の月』、『王の日』。
しかも、産まれた時間まで照らし合わせると、丁度『正午』になる。
自らが封印される前、『勇者』が隔世遺伝を起こす様に、
精霊ルビスが懇親の力を持って、仕向けたのであろう……。
生命操作は、神のなせる業。
決して人間が真似する事、不可能である。

勇者アイリは右手に『王者の剣』を握り締め、中段の構えを取る。
左手の『勇者の盾』を後に引き、戦闘態勢に入った。

「……な、何、皆様、ぼ〜っとしてるんですの!!?
 アイリを援護しますわよ!!!!」
仲間達は唖然としていたが、リオの一言で気を取り直すと、各自戦闘態勢に入った。

勇者達全員が、戦闘態勢に入ったのを確認すると、
アスラゾーマは、冷たく嘲笑した。
だが、先程までの『遊び』の表情ではない。
周囲に緊張感が迸(ほとばし)る!!

『では、[勇者の魂]争奪戦といこうか?』

アスラゾーマは、各腕を振り翳し、構えを取った。
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