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「エビル……!!」
勇者アイリが心配して駆け寄る。
彼女の姿を確認し、エビルは苦笑した。

「どうやら、私もお前達と同じ立場だったらしい……。」
「……!?」
「アイリ。
 奴は……ブロスは、脳に直接命令を下されている。
 今の奴は機械と一緒だ。
 死んでいるのと変わらない。」
「……そんな!!?」

愕然となり、アイリは呆然とブロスを見つめる。
自分達を支援した為に、犠牲になってしまったのだ……。

__ごめんね。ブロス……!!

唇を噛み締める。
悔しさに頬を涙が伝う。
今、彼女が出来る事は、彼を解放してやることだ……。
果たして自分にそんなことが出来るのだろうか……!?

「アイリ!!!!
 危ないですわ!!!!」

突如、リオが叫ぶ!!!!
だが間に合わず、考え事をしていたアイリの隙を狙って、
ブロスの拳が振り払われた!!
華奢な身体が吹っ飛び、祭壇の近くまで戻される!!!!

「……やりやがったな!!!!」

勇者アクシズがいきり立って、『ガイアの剣』を振り下ろした!!!!
剣は確かに、ブロスの腹を深く切り裂き、青い血を滴らせるが……!?

__『痛み』の感覚が無いのか!!?

驚愕して止まる彼を、物凄い力でブロスは掴み上げた!!
勇者は剣を落とし、魔物の手を掴みながら逃れようともがくが、
腕の力は一向に弱る気配も無い。

__『力』のストッパーも取り外されているのか!!?

生き物は窮地に陥ると、『力』のストッパーが取り払われ、
潜在能力がそのまま発揮される場合がある。
一般的に言うと『火事場の馬鹿力』というものがコレにあたる。
だが常時、その状態でいると身体が壊れる為、
生物達は普段、力を抑えて活動しているのだ。

無論、ブロスの身体も、限界に近づいていた……。
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『DQ3』外伝CONTENTS