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イシュタル島に佇む『ゾーマの城』。

勇者達は、司令室を出た。
だが、オルテガの遺体を誰かが見張らねばならない。
もし、ゾーマを倒して『魂』を取り戻したとしても、
『肉体』が無いと生き返れないからだ。

「蘇生呪文『ザオリク』を何度もかけてますから、
 解放されたとたん直ぐ生き返りますわ……。」
僧侶リオが、見張り役になった商人ミーナに言付ける。
盗賊エルマと、カンダタ、ミニモンも、彼女の護衛の為、残ることになった。

「アイリ。
 心配せんでも大丈夫や。
 ウチらにまかしとき!!」

「ええ。
 ありがとう、ミーナ。」
アイリは、ミーナの手を握り締めた。
彼女も握り返してくる。
「絶対、『魂』吸収されたらあかんで!!!!
 こんなら、死ぬ方がまだマシや!!!!」
「そうね……。」

アイリは苦笑して答えたが、
何故、あの時急に切なさを覚えたのか、今になってやっと理解した。

__もし、失敗したら、死んでもアクシズと一緒になれないのね……。

少女は俯き、唇を噛む。
どうして、ここまで残酷な仕打ちを受けねばならないのか!!?
理解できぬ異常な状況に、脳内思考が支離滅裂に掻き乱され、吐き気すら覚える。
今後、普通に死ぬことも、あの世で一緒になることも許されないとは……!!

アクシズは、そんなアイリに気がつき、彼女を遠目からじっと見つめていた。
エビルは嘆息すると、徐にアクシズに近づき彼の肩に手を置く。

「アクシズ……。
 小さい頃、お前は本当に無鉄砲で、竜の女王を困らせたよな……。」
エビルの昔話に、アクシズの顔が綻ぶ。
「確かに。
 あの頃は、俺には『守るもの』なんて無いと思っていた。
 だけど今は、どうしても守りたい者がいる。」
「アイリか?」
「ああ。」
「否定しなくなったな。」
「……オルテガさんに一応許可貰ったからな……。」
言って、アクシズはエビルの顎を小突いた。
エビルといると、どうも必要以上に話しすぎてしまうようだ。

「アクシズとアイリさんて、既に公認の仲だったんですね。」

それは賢者ディートの耳にも入ってしまっていたようである。
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『DQ3』外伝CONTENTS