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地下世界アレフガルド
リムルダール地方からイシュタル島へ架かる『虹の橋』が、
徒歩での浸入をも可能にしていた。
もちろん、勇者アイリの功績である。

「何だか、急に温かくなってきましたね……。」
吟遊詩人ガライが、誰に聞かせるともなく呟いた。
彼の手には『銀の竪琴』が添えられている。
地面を覆い隠していた雪が全て溶け出し、身を凍らせる寒さも無い。

「また、ガライの竪琴に救われた……。
 感謝する……。」
負けず嫌いのグレイだが、親友ガライに対しては素直になるらしい。

『銀の竪琴』は何故か、ガライ以外の者が弾くと、魔物を呼び寄せてしまう。
だが、当人が弾くと、普段は会話できないような鳴き声の魔物達と話せるのだ。
彼等がココに来るまでに、レジスタンスの何名かはその命を失っていた。

「アイリさんは、無事なのか……?」
グレイは、真剣な目でガライを見つめた。
彼は首を横に振る。
「僕じゃ、わかりませんよ……。
 ただ。」
「ただ……?」

グレイが問うと、ガライは未だ晴れぬ天の闇を見据えた。

「嵐の前の静けさ……て、感じがしませんか……?」

「そうだな……。
 こんなに静かなのに、何故か緊張する……。」

周囲を見渡すが、風も吹いていない……。
だが、まだ嵐にはなっていない……。


一方、『ラダトーム城』。

ラルス一世は、急に雪が引き始め、元の気候を取り戻した大地に不審感を抱いていた。
普通は、有り難い事である筈だし、嬉しい事の筈だ……。
だが、静か過ぎる……。

__何か、悪い事でも起こらぬと良いが……。

対岸の『ゾーマの城』を見据え、王は緊張した。
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『DQ3』外伝CONTENTS