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「お前、『キング』か!?」 以前、ディートから自分に変身した話を聞いていたアクシズは、 魔王軍幹部キング(キングヒドラ)の名を口に出す。 ……だが、今のキングは姿も声も『勇者アイリ』のままである。 「残念ね。もっと遊べると思っていたのに……。」 キングはアイリの口調を真似、その華奢な姿のまま両手を前に翳す。 宙から『死神の鎌』が出現し、 握り締めると、交互に振り翳(かざ)し構えを取った。 「『アイリ』の姿で、その構えされると何か嫌だよな……。」 思わず顔を引きつらせ、狼狽したものの、 アクシズは、背中の『ガイアの剣』を二刀同時に鞘から抜き、構えを取る。 オルテガも続いて『雷神の剣』を鞘から抜こうとするが、 それより早く、キングが真後ろに現れる!!!! ……と、彼はオルテガの後頭部を掴むと、黒い電撃を走らせた……!!!! 「……!!!!?」 勇者オルテガは、突然の頭痛に身悶え、頭を抱えてその場に倒れてしまう。 「オルテガさん!!!!」 アクシズが駆け寄り、オルテガを抱き起こす。 同時に、キングは跳躍すると、勇者達から離れた。 「オルテガさんに、何をした……!!!!?」 アクシズは、橋の真ん中に降り立つキングに向かって叫ぶ。 『アイリ』の姿のまま、キングは冷酷な答えを『アイリ』の口調で返す。 「『記憶』を返してあげたのよ……。 でなきゃ、『この姿』で貴方達を殺しても意味ないでしょう?」 キングは過去、 勇者オルテガが魔王軍幹部サタンとの闘いに敗北し、 ネクロゴンド火山火口に落ちた時。 そのまま瀕死だった勇者を、地下世界アレフガルドに送った。 そして彼が地上界へ戻る際の、瞬間転移呪文『ルーラ』の効果を封じる為、 『地上界の記憶』を封じたのだ。 「……痛……。」 オルテガは、しきりに首を横に振り、頭を抱えて起き上がる。 そして、周囲を見回し、次に自分の掌(てのひら)を見つめる……。 「わ、私は……?」 「……オルテガさん。 大丈夫ですか……?」 アクシズは、オルテガの顔を心配そうに覗き込む。 オルテガは、そんな彼の顔を眩しそうに見つめた。 「……やはり、よく似ているな……。 君のお父さんに……。」 オルテガの記憶が戻った事に、アクシズは驚きを隠せない!! 彼の胸が熱くなる……。 確かに彼は、オルテガの記憶の無い時に、『父・サイモン』の事も話していた。 しかし、その頃のオルテガは、今までの記憶と照らし合わせ、 彼に親友の面影を見ることは出来なかった。 「よりによって、ウチの娘に化けるとはな……。 私も見縊(みくび)られたものだ……!!!!」 徐に立ち上がると、オルテガはキングを睨みつけ、怒りを露(あらわ)にする……!! そして、『雷神の剣』を鞘から抜き、身構えた。 キングは、鎌を構えなおし、戦闘態勢に入る。 勇者2人が共に守るべき、大切な存在『勇者アイリ』の姿のままで……。 |
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