<5> | ||
一方、勇者アクシズと勇者オルテガは、 地下最深部へ向かって着実に進んでいた。 イシュタル島の戦闘での疲労も残っていたが、 2人は意に介さず進んでいく。 魔王軍の残党も、城内に残っていたのだが、 遭遇しても彼等に恐れをなして逃げていくのだった……。 __水の流れる音がする……!! アクシズが足を止めて音の方を見ると、城内に地下水路が有り、 橋が架かっている。 そして、彼は目を見開き驚愕した。 橋の上には、黒いドレスを纏った美しい少女がおり、 慎ましやかに佇んでいる。 ……だが、その瞳だけが異常に冷たい……!! 「アイリ……。」 疲労のあまり幻を見ているのだろうか……? 勇者アクシズは狼狽しながらも、口は愛しい少女の名を呼ぶ。 「!?」 それを聞いた勇者オルテガが驚愕し、アクシズと少女を交互に見やる。 この『少女』が自分の娘『アイリ』だと言うのだ……!! 記憶を失っていただけに、彼の衝撃は大きい……。 アクシズは呆然と彼女を見つめたまま、硬直して動けない。 そんな彼等に気付いたのか、 『アイリ』と呼ばれた少女は、艶やかに微笑むと、 徐にアクシズに向かって両手を差し出す。 自分を抱き締めてくれと言わんばかりに……。 「アクシズ……。 待っていたわ……。」 「……。」 彼女の声に、彼の足が一歩、また一歩、ゆっくりと前に進んでいく。 まるで、何かに取り憑かれたように……。 __いかん!!!! 疲労で平常心を失いかけたアクシズの腕を咄嗟に引き寄せ、 オルテガは、彼の頬を叩く……!! 「!?」 正気に戻ったアクシズは、驚愕してオルテガの顔を見た。 「よく見ろ!!!! お前は、『奴』の殺気に気がつかなかったのか!?」 オルテガは、真剣な表情でアクシズを叱ると、次に『少女』を睨み付けた。 自分達の方が、勇者アイリより先に来ている筈なのに、 彼女がココまで先回りするというのは余りに不自然である。 それに、オルテガを騙そうにも、幸い彼自身にアイリの記憶が無い……!! 「貴様、何者だ……?」 オルテガが正体を問うと、少女は冷たく嘲笑した。 |
||
■次へ ■前へ ■『DQ3』外伝CONTENTS |