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一方、勇者アクシズと勇者オルテガは、
地下最深部へ向かって着実に進んでいた。
イシュタル島の戦闘での疲労も残っていたが、
2人は意に介さず進んでいく。

魔王軍の残党も、城内に残っていたのだが、
遭遇しても彼等に恐れをなして逃げていくのだった……。

__水の流れる音がする……!!

アクシズが足を止めて音の方を見ると、城内に地下水路が有り、
橋が架かっている。
そして、彼は目を見開き驚愕した。

橋の上には、黒いドレスを纏った美しい少女がおり、
慎ましやかに佇んでいる。
……だが、その瞳だけが異常に冷たい……!!

「アイリ……。」
疲労のあまり幻を見ているのだろうか……?
勇者アクシズは狼狽しながらも、口は愛しい少女の名を呼ぶ。

「!?」

それを聞いた勇者オルテガが驚愕し、アクシズと少女を交互に見やる。
この『少女』が自分の娘『アイリ』だと言うのだ……!!
記憶を失っていただけに、彼の衝撃は大きい……。
アクシズは呆然と彼女を見つめたまま、硬直して動けない。

そんな彼等に気付いたのか、
『アイリ』と呼ばれた少女は、艶やかに微笑むと、
徐にアクシズに向かって両手を差し出す。
自分を抱き締めてくれと言わんばかりに……。

「アクシズ……。
 待っていたわ……。」

「……。」
彼女の声に、彼の足が一歩、また一歩、ゆっくりと前に進んでいく。
まるで、何かに取り憑かれたように……。

__いかん!!!!

疲労で平常心を失いかけたアクシズの腕を咄嗟に引き寄せ、
オルテガは、彼の頬を叩く……!!
「!?」
正気に戻ったアクシズは、驚愕してオルテガの顔を見た。

「よく見ろ!!!!
 お前は、『奴』の殺気に気がつかなかったのか!?」

オルテガは、真剣な表情でアクシズを叱ると、次に『少女』を睨み付けた。
自分達の方が、勇者アイリより先に来ている筈なのに、
彼女がココまで先回りするというのは余りに不自然である。
それに、オルテガを騙そうにも、幸い彼自身にアイリの記憶が無い……!!

「貴様、何者だ……?」

オルテガが正体を問うと、少女は冷たく嘲笑した。
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『DQ3』外伝CONTENTS