<2>
地下世界アレフガルド。
『ゾーマの城』が佇むイシュタル島。

勇者アイリ達9人は、『結界』を破り、『虹の橋』を渡り、島内部に侵入した。
入って直ぐの凄惨な光景に、一同驚愕し言葉を失う。

「アクシズと、オルテガさんって、本当に無茶しますね……。」
沈黙を破って、賢者ディートは嘆息した。

イシュタル島は、何処までも続く魔物の死骸の山と、散乱した魔物の羽、
草木も焼け崩れ、青い血に染まった死の大地に変貌を遂げていた。
そして、更に奥に進むと、今度は大地が削れて更地になっている。
もっとも、この更地の原因はアクシズの『マダンテ』発動が原因なのだが……。

勇者アイリは、周囲を見回す。
だが、勇者2人の姿は見当たらない。
もう、『ゾーマの城』内部に侵入したのだろうか?

「でも、お2人が強くて本当に良かったですわね。
 ね。アイリ♪」
僧侶リオが、アイリに微笑みかける。
同じ勇者とはいえ、彼女にとっては『父親』と『恋人』という存在である。
思わずアイリは、顔を真っ赤にして俯いた。

「……。」

カンダタは腕組しながら周囲を見回している。
やがて、彼は真剣な表情でアイリの傍まで近づいてきた。

「アイリ。
 アクシズ達、何時から戦闘を始めていたんだろうな……。」

「確か、ブロスが私達の前に現れたのは、丸2日前位だったと……。」

言って、アイリは愕然となる。

勇者アクシズと、勇者オルテガは、彼女達が辿りつく前にも、
ずっと戦闘を続けていたのである。
それも、魔王軍の総力を結集した軍隊とである。
今の、彼等の疲労は限界であってもおかしくない……!!
アイリは思わず、胸の前で両手を握り締める。

__……2人とも……。生きていて……!!

しかし、祈ってどうなるものでもない。
勇者アイリは、キッと城門を睨みつけると、仲間達に向き直る。

「皆。
 今まで、こんな私に着いて来てくれて、ありがとう。
 私の一生のお願い。
 皆の力を私にもう一度、貸して……!!!!」

ソレは勇者というよりは、いかにも少女らしい頼み方だった。
アイリの言葉に、緊張感で固まっていた仲間達の顔が一瞬綻ぶ。

そして……。

仲間達は、勇者アイリに向かって、力強く頷いた。
次へ
前へ
『DQ3』外伝CONTENTS