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『ゾーマの城』地下最深部。
勇者2人の動きを見守っていた大魔王ゾーマは、微笑した。
その表情は余裕そのもので、もはや正常な感覚そのものが無い様である……。

『奴ら……。
 中々、やるではないか。
 それこそ、喰いがいある魂に違いあるまい……。』

……と。
ゾーマの目に、巨大な魔物の姿が映る。
闇の君主は、不気味に冷たく嘲笑した。

『ブロスよ。
 何かワシに用かな?』

しかし、ブロスは君主の前で平伏さない。
闇の君主は相変わらず余裕の表情で嘲笑っている。

やがて、意を決したように、ブロスは言葉を綴った。

「ゾーマ様……。
 我々は、貴方の為に御身を捧げて参りました……。
 『人間に壊された我々の生活と秩序』を取り戻す為に……。
 だが、それは違った……。
 『秩序を乱していたのは、我々の方』だった……。」

ブロスは、闇の君主を睨み付けた。
そして、彼の口調が突如変わる……!!

「『勇者の魂』だけではなかった……。
 人間達だけではなかった……。
 貴様に『魂』を喰われていたのは、我々も同じだった……!!!!
 今まで、貴様の為に、多くの魔族のモノ達が血を流し、身を滅ぼしていった。
 ……その『魂』すら、貴様は自らの欲望の為に貪ったのだ……!!!!」

『よく解かったな……。ブロス。
 そうだ。皆、喰ったよ。
 ワシが皆、喰ってやった……!!
 そして、今もな……。』

大魔王ゾーマは冷たく微笑した。
ブロスは、ソレを聞いて思わず驚愕する。
『結界』内で、勇者達が倒した魔王軍の軍隊……!!?
その大量の『魂』全て喰ったというのだ。

ゾーマが『死』を喜ぶのは、『魂』を喰うことで糧にしてきたからである。
彼が今まで喰ってきた魂の数は計り知れない……。
それは、人間でも魔族でも構わないのである。

ブロスはいきり立って、玉座に腰掛けたゾーマに向かって拳を振るう……!!
だが、ソレは簡単にゾーマの掌で受け止められた。

『ブロスよ。
 謀反ならば、もっと上手くやるのであったな。』

大魔王ゾーマは嘲笑すると、ブロスの拳を掴んだまま玉座から立ち上がる。
そして彼の額に四本の指をズブリと潜り込ませた……!!
指は直接脳に触れ、ブロスは耐えようのない苦痛と感覚に喘ぎ苦しむ。

『ブロス。命までは取らぬ。
 今まで通り、お前はワシの為に尽くせばよい。』

ゾーマが指を抜くと、ブロスの首が項垂れ、ガクッと両膝をつき、
そして動かなくなった……。

ゾーマの笑い声が城内に響く。

その様子は狂った神の姿にも見えた……。
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『DQ3』外伝CONTENTS