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一方その頃。 リムルダールの町を出た勇者アイリ一行は、 『結界』のあるイシュタル島目指して進んでいた。 ……と、見慣れぬ巨大な魔物が行く手を阻み、一同は驚愕する。 その魔物はあまりにエビルやバラモスに酷似していたのだ……!! 「久しぶりだな……。 エビル。」 魔物は、仲間のエビルを見て微笑する。 エビルは魔物の顔に戦慄し、警戒心から身構えた。 そして喉の奥から絞り出す声で、魔物の名を呼ぶ。 「何しに来た……!? ブロス。」 「まあ、そう警戒せんでも良いであろう? ワシは闘いに来たのでは無い。」 ブロスは余裕の表情で、エビルを制す。 「まさか、エビルはんを、魔王軍に寝返らせようとしとるんか!?」 商人ミーナは、商売の世界ではよく見られる光景を思い出し、 魔王軍幹部・総司令官ブロスにその真意を問うた。 すると、ブロスは急に笑い出した。 「娘。面白い事を言うな!!!! 確かに最初からそうした方が楽だったかもしれんなぁ。」 「ふざけるな!!!! 誰が死んでも寝返るものか!!!!」 いきり立って、エビルが叫ぶ。 彼を左手で制し、勇者アイリはブロスを真っ直ぐ見た。 「貴方の目的は何? 私?」 彼女は落ち着いており、殺気が感じられない。 ブロスは嘆息すると、何と勇者達の現状を報告し始めた……!! 「『勇者アクシズ』と『勇者オルテガ』は『結界』の中で戦闘中だ。 彼等は本当に強い。 だが、それもいつまで続くか解からんよ。」 アイリは更に問う。 交互に質問と返事が返る。 「貴方は、これからどうするつもりなの?」 「我が君主に真実を問うてみようと思う。」 「貴方にとって、非常に危険な事ではないの?」 ブロスは嘆息すると、勇者アイリを見つめた。 「それは、お主だって同じであろう? 『結界』の中で闘っている、勇者達同様にな。」 これから先は生ある者達にとって、気の狂いそうな環境が待っている……。 その違和感は、魔王軍とて感じていたらしかった。 |
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