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アレフガルド大陸、南東部。
リムルダールの町。

この町に着き、勇者アイリ達は、さっそく元マイラの警備兵ダイラスに迎え入れられた。
彼は、アイリにオルテガの『結婚指輪』を渡すと、
勇者達の現状を報告した。

彼が言うには丁度入れ違いで、勇者オルテガと勇者アクシズの2人が、
旅立った後だというではないか……!!

アイリは愕然となる。
「『ゾーマの城』の『結界』が解けていないのに、どうして……!?」

「それが、僕が見に行った時は、ちゃんと黒い橋が架かっていて、
 人が通れるほどの『結界』が開いていたのです……。
 その事を報告したら、オルテガ様とアクシズ様が急ぐように旅立たれてしまって……。」
ダイラスはそう言って、力無く項垂れた。
「……2人を、止めなかったのか?」
戦士クリスが、嘆息しつつ彼に問うた。
ダイラスは、俯いて首を横に振った。

……と、彼はふと勇者アイリの顔に釘付けになる。
アイリは一瞬驚愕し、狼狽した。

「わ、私の顔に何かついていますか……?」

「いやぁ〜〜〜。
 アクシズ様から伺っていたのですけど、
 本当に、お綺麗な方ですねぇ〜……!!
 貴女がオルテガ様の娘さんですか……!!」

「だったら、どうだって言うんだ?」
カンダタが、更に近づこうとするダイラスの首根っこを掴んで持ち上げる。
そして、そのまま手を離すと、彼はあっけなく尻餅をつき、苦痛に身悶える。
抗議しようと見上げるが、予想に反してカンダタの表情は真剣だった。
「その様子だと、オルテガはもう、記憶を取り戻したのか?」
「いえ。
 アクシズ様が解かる範囲で、教えたものだったそうですけど。
 まだ、完全には理解していないようでしたよ?」

ダイラスの言葉に、一同は思わず顔を見合わせる。
その不審さの核心をついたのは、やはり賢者であるディートだった。

「ひょっとして、オルテガ様は今まで
 『地上界へルーラ出来ない状態』だったのではないのでしょうか……?
 だって、瞬間転移呪文『ルーラ』や『キメラの翼』って、
 一度記憶した場所にしか、行けない仕組みになっているのですよ!?」

つまり賢者の推測では、何者かが『地下世界アレフガルドから彼を逃がさぬ』よう、
ワザと記憶を封じたということらしい……。

「まずい事になったのかもしれんな……。」
エビルは重い口を開き、搾り出すような声で呟く。
……皆、同意見なのか、その場で沈黙していた。
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『DQ3』外伝CONTENTS