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ラダトーム城。

ラルス一世は、勇者アイリが『ゾーマの城』の『結界』を解いたのと同時に、
軍を送り出そうと戦闘の準備を整えていた。
「陛下……!!
 出撃の準備は全て整いました!!」
将軍が王の前に平伏し、現状を報告する。
王は、深く頷くと、対岸に位置する『ゾーマの城』を見据えた。
そして、決意を新たにする。

__アイリ殿。待っていて下され……!!!!


城砦都市メルキド。

レジスタンスの大半を失ったものの、
グレイの戦意が喪失することは無かった。
「皆、準備は整っただろうな……!?」
長の問いかけに、皆、武器を持ち上げて一斉に答える。

「グレイさんは、アイリさんに惚れていますからね。」
ガライが苦笑して言うと、グレイは赤面して咳払いした。
どうやら彼は、覚醒したアイリを見ても、別に何とも思わなかったようだ。
(彼の嫉妬の矛先は、アクシズに向けられたままであるが……。)

「とにかく、俺は彼女の為だったら、命を懸けられる……!!!!
 他の勇者だったら、そんなことはしないがな。」
グレイはそう言うと、『ゾーマの城』が在る方向をじっと見つめた。


皆、勇者アイリを様々な形で慕い、彼女の力になりたいと奮起してくれているのだ。
それは同じ勇者である彼女の父親・オルテガや恋人・アクシズも同じ想いであった。


リムルダール地方、南東部。
『聖なる祠』から出た勇者アイリ達は、次は『リムルダール』の町を目指していた。
祠の神官が、その町から真っ直ぐ西に向かった処に、
『虹の橋』を掛けるのに適した場所があると教えてくれたからである。

……だが。

大魔王ゾーマは勇者アイリの先回りを予知し、
ワザと勇者アクシズと勇者オルテガの為に『結界』を開き、
またしても彼女に『すれ違い行動』を起こさせていたのだ。


『ゾーマの城』地下最深部では、
大魔王ゾーマが勇者アイリの行動を終始見つめていた。

『[精霊ルビス]が、自らの触媒に選んだ[勇者アイリ]……。
 ワシはとんだ思い違いをしていたのかもしれぬ……。
 まあ、[勇者の魂]を手に入れれば、いかに[覚醒した勇者]とて取るに足らん。』

__地上界も天界も、全ての世界を我がものにしてくれるわ……!!!!

ゾーマの笑い声が闇の中に響き、やがて城内に静寂が戻った。
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