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一方、勇者アイリ一行は、勇者アクシズの先回りをする為、
リムルダールの町には寄らず、船で『聖なる祠』まで来ていた。

『聖なる祠』はリムルダール地方南東の岬に在る。

「アイリ〜〜!!
 待ってですわ!!!!」

僧侶リオは、遥か前方のアイリに向かって叫ぶ。
アイリは船を下りたとたん、急ぎ足で祠へ向かって歩き出したのだ。
彼女が振り返ると、仲間達が遥か後ろにいる。
アイリは思わず嘆息した。

『太陽の石』『雨雲の杖』『聖なる守り』を揃えたが、
実際に使用可能にするのには『聖なる祠』の祭壇へ持って行かなければならない。
それで、彼女らはリムルダールの町へ寄らず、
この祠へ直行したのであった。

「……アイリさん。
 まだ、『アクシズの魂』がゾーマに取られると決まった訳じゃないのですから、
 そんなに急がなくっても……!!」
賢者ディートが、焦り気味の勇者アイリを見て嘆息し、抗議する。

確かに、今のアイリは、アクシズを黙って独りで行かせてしまったことに後悔し、
冷静さを欠いていた。
それに気がついたのか、彼女は俯き、悔しそうに唇を噛む。

魔王バラモスを倒してからというものの、
次々と自分の目の前で、人が死んでいく……!!
以前、エビル(バラモスエビル)に「これが戦争だ」と諭してもらい、
頭では理解していても、彼女の心が其れを許していない。

__こんな筈じゃ無かった……。

仲間を待ちながら勇者アイリは、
決して踏み込んではならない領域に入ってしまった自分を呪った。

確かに、『神』にとっては人一人の死など、ほんの小さな事に過ぎないであろう。
人の生など彼らにとっては、ほんの一瞬の出来事である。
大魔王ゾーマはそんな『神』と敵対出来る能力を持ち、
おそらくその感覚も人智を超えたものであろう……!!

……だが。
アイリが世界の為に闘うのは、『神』と対等する為では無い……。
ただ、自分の大切な人々と、平穏な生活を送りたかっただけである。
自分の大切な人々を、守りたいだけである。
その一瞬を、ただ精一杯生きたいだけなのだ……。
それは、勇者アクシズ、勇者オルテガとて同じ目的であろう……。

__私にとっては、あなた達『仲間』が宝物なのよ……?

アイリは目を細めて、仲間達がココまで来るのを見守っていた。
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『DQ3』外伝CONTENTS