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『リムルダール』の町。
『ゾーマの城』にある意味一番近い場所だと言われているが、
岩山に囲まれた地形と、周囲を運河に囲まれ、
それが魔物達の侵攻を抑える結果となっていた。

亡き父の遺志を継ぎ、勇者オルテガと共に闘う事を決意した勇者アクシズは、
今、彼と共にこの町にいた。
オルテガは、黙って置いて行ってしまったことをダイラスに抗議されるが、
当の勇者は、そ知らぬ顔で聞き流している。

「取り敢えず、一旦宿に泊まって作戦でも立てた方が賢明だろう。」
宿屋の一室に荷物を置きながら、オルテガはアクシズを見た。
相変わらず彼は窓の外を見つめている。

「アイリが気になるのか……?」

記憶が戻らず、ただ聞いただけの情報とはいえ、
オルテガは『娘』の名を言った。
「い、いえ……!!」
アクシズは狼狽し、慌てて彼の方に向き直る。
だが、嘘が見え見えで、オルテガは思わず噴出した。
……と、直ぐに優しい表情に戻り、
「娘は、どんな感じなのだ?
 ほら。私には記憶が無い。」
と、問う。

「とても綺麗なお嬢さんです。
 失礼な話でスイマセンが、何せ『勇者』の道を選ばれたので、
 『お淑やか』とは言い難いかもしれません……。
 でも、とても優しく、貴方と同じで包容力があります。」

アクシズは、自分で言ってしまって顔を赤くした。
自分の『欲目』かもしれないが、褒め言葉しか見つからない……。
それが彼女の父親の前であっても無くても、
彼にとっては同じことであったのだが……。

……と、オルテガがアクシズに向かって何かを投げた。
右手で受け取り、掌を広げる。
それは紅い宝石の入った指輪であった。
リング部分に2人分の名前が彫ってある。
アクシズは思わず彼に問う。
「これは?」

「私の『結婚指輪』らしい。
 ルシアと彫ってあるのは、私の妻の名だと思う。
 全く、私の記憶を消した本人を呪いたい気分だよ。」
オルテガは嘆息すると苦笑して答えた。

記憶が無くとも、オルテガは大分事情が飲み込めているようである。
アクシズは彼の大事な指輪を見つめた。
この指輪は『命の指輪』といって、一般の人間には入手が困難な代物だった。
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『DQ3』外伝CONTENTS