地下世界アレフガルド。
地下世界の創造主、精霊ルビスが復活したのにも関わらず、
闇は晴れず、状況は変わらなかった。
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「ヒドラ族とは器用な存在なのだな……。」

ラダトーム対岸に位置する、『ゾーマの城』。
その地下の一室で沈黙しているキング(キングヒドラ)に、
総司令官ブロス(バラモスブロス)が声を掛ける。
キングは、普段は人間の姿をしており、巨大なヒドラの形を取っていない。
彼は、徐に声のする方へ視線を向けた。

「お前は、元々魔界の守護神『グランドラゴーン』の側近だったと言うではないか。
 それが、何故我々の下に就いたのだ?」

ブロスの言葉に、キングは珍しく普通に苦笑して答える。

「長(おさ)が、私を切ったのですよ。
 長は元々魔界深層部にずっと居て、何も行動を起こさない。
 ですが、私は少々やりすぎたみたいですね……。」

__なるほど、追放の身というわけか……。

皆まで言わずとも理解したブロスは、それ以上聞くのを止めた。
……と、彼はもう1つの疑問をキングに問う。
「そうだ。
 何故、お前は『あの時』、わざわざ『勇者アクシズ』に変身したのだ?
 そんな事せずとも、メルキドのレジスタンス達は殺せた筈では……。」

「そうすれば、『アイリ』が来てくれると思ったのですよ。
 悪いですか?」

キングは何故か『勇者』と付けず、彼女の名だけを言った。
だが、魔族のブロスにはその真意が読めず、怪訝そうな顔をする。
キングはそんな上官に向かって冷たく微笑すると、
いつもの彼の調子に戻って言った。
「そういえば、ブロス♪
 『勇者アクシズ』と『勇者オルテガ』が城に来られるように、
 ゾーマ様が『結界』を開けたらしいですよ〜〜?
 私が彼等の相手をしてもいいのですね?」

「うむ!!」
ブロスは、彼の言葉に頷くと、踵を返し去って行った。

__やれやれ……。
   ゾーマ様の野望が今来る2人の勇者達だけで、足りると有り難いのですがね……。

らしくない事を考える自分に、キングは思わず苦笑いをする。
取り敢えず、勇者達はまだリムルダールを離れていない。
静寂が支配するゾーマの城で、彼は俯き沈黙していた……。
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