＜5＞
	「た、大変です!!!!」 マイラの村。 ディートが蒼白な顔で、アイリの部屋に訪れた。 彼の狼狽振りは尋常ではない……!! 「どうしたの？」 アイリが問うと、彼は信じられないことを言った。 「アクシズが居ないんです!!!!」 ＿＿……!!!!? アイリは驚愕し、慌てて宿の外へ出て、村中を探した。 仲間達も同様に探し回る。 だが、彼の姿は見当たらなかった。 気が付けば、勇者アクシズの荷物も装備もそのまま消えているではないか!! 「何か、心当たりは無いのか？」 狼狽しながらも、エビルはアイリに問い質す。 アイリは、その場にがくっと両膝を着き、項垂れた。 瞳に涙が浮いている……。 勇者アクシズの父・勇者サイモンの魂が、既に大魔王ゾーマに吸収されていた。 それを精霊ルビスの口から知った彼の怒りは、どれ程激しいものだったのだろう……？ 「大丈夫ですよ……。 　アイリさん。 　『ゾーマの城』の『結界』は、まだ解けていません。 　僕らが先回りすればいいだけです。」 ディートが、アイリを励まし助け起こした。 だが、アクシズを失ったアイリの精神的ショックは予想外に大きい……。 やっと、本当に解かりあえた筈だった……。 本当の意味で心で結ばれた。なのに……。 アイリは涙が止まらない。 ＿＿どうして貴方はいつも独りで悩み、独りで背負い、独りで行ってしまうの？ 『結界』を解く為の3種の神器、 『太陽の石』『雨雲の杖』『聖なる守り』は全部揃った。 『アレフガルド』に伝わる3種の神器、 『王者の剣』『光の鎧』『勇者の盾』も全部揃った。 ……だが、肝心の『勇者』は揃わない……。 むしろ彼等を揃えてしまったのは、大魔王ゾーマの方だったのかもしれない。
	■次へ ■前へ ■『DQ3』外伝CONTENTS