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「『太陽の石』がラダトームにあるの!?」
勇者アクシズの話を聞き、勇者アイリは驚愕する。

本当なら、恋人同士の再会を喜び抱擁でも見られると思っていたのだが、
予想に反して2人は何もしなかった……。
魔王軍幹部キングとの戦闘で『竜神の血を覚醒』させてしまったアイリは、
アクシズに対しても遠慮しているのか、どこか無理に余所余所しい……。

宿の外。仲間も全員揃っている。

「ああ。カンダタが言っていた。
 もうすぐ、ココにやってくると思うが……。」
アクシズはそう言って周囲を見回す。

すると噂をすれば影でカンダタが戻って来た。
勇者2人に気が付いたカンダタは、ニヤリと微笑する。
「遅くなったな。
 その様子だと、めでたく再会出来たらしいな♪」
「茶化すなよ、カンダタ……。
 それより、『太陽の石』のことを詳しく聞かせて欲しいのだが……。」
アクシズが聞くと、カンダタはとんでもない事を口にした。

「ああ。アレか?
 『太陽の石』なら、『盗品オークション』に出品してきたぞ。」


「……。」
一同、顔面蒼白になり、気まずい沈黙。


真っ先に沈黙を破り、エルマがカンダタを脳天から怒鳴りつける。

「今すぐ、取り返してらっしゃい!!!!
 あんた、世界を滅ぼす気!!!!?」

「は、はい……。すいませんでした……。」
カンダタは、目を見開きエルマより小さくなって狼狽した。

「全く、『知らない』とは恐ろしいものだな……。」
エビルが嘆息し項垂れる。一同は呆れて声も出ない……。
いったい、何処まで一筋縄でいかなければ気が済むのだろうか……。

『盗品オークション』とは『地上界』のみに存在し、ギルドの元締め達が行っている。
しかも、一度出品されてしまうと、落札しない限り取り返すのは不可能である。

買い手に回れるのは、身分の高い人物だけだ。
パーティ内で身分の高い人物といえば……?

「まあ、あのオークションで『買い手』に回れるのは、
 サマンオサ所属、代々勇者の家系。クライン家の子爵『アクシズ』。
 アリアハン所属、代々勇者の家系。ヴァンベルト家の令嬢『アイリ』。
 ダーマ神殿、大神官バサラの次男『ディート』。
 アリアハン・エクル大臣の孫娘、エクランブール家の令嬢『リオ』。
 ……ってところかしらね。」

盗賊ギルドをよく知るエルマが、今更仲間の『本来の肩書き』を語る。

「私達が地上界にいる間、他の皆はどうするの?」
アイリがエルマに素朴な疑問を投げかける。

「あたし達は、地下世界アレフガルドで、王者の剣以外の3種の神器の一つ、
 『勇者の盾』を取りに行くわ。もちろん、あんたの為にね♪
 確か、盗賊仲間から聞いた話では、呪文が一切効かない洞窟らしいから、
 あんた達、丁度足手まといになる所だったしね♪」
要するに、パーティを呪文が『得意』側と『不得意』側に分断する必要がある訳だ。

アイリは、地下世界の洞窟探索をエルマ達に任せることにした。
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