地下世界アレフガルドでは闇に包まれている所為か、四季すら無い。
また、地下世界ということで、大魔王を倒した後でも、
果たして闇から解放されるかどうかは別問題であった。

基本的に、光源となるものがあれば話は別であるのだが……。
<1>
城塞都市『メルキド』。
アレフガルド大陸、南東に位置し、高い城壁で囲まれた大規模都市である。

『雨の祠』で、『ゾーマの城』の結界を解く『三種の神器』の一つ、
『雨雲の杖』を手に入れた勇者アイリ一行は、
断崖絶壁の迷路を抜け、無事『メルキド』に辿りつくことが出来た。

「へぇ〜〜、大きい扉ね〜〜〜。」
盗賊エルマが、高い城門を見上げて感嘆のため息をつく。
「普通、門番か誰かいると思ったのだが、誰もいないな……。」
王宮戦士らしく、戦士クリスが周囲を見回す。
だが、やはり誰も居ない。

城門を押してみるが、内側から鍵が掛かっているらしく、開かない。

「エルマさん。お願い。」
アイリは、エルマに『最後の鍵』を渡す。
女盗賊は頷くと、手持ちのロープの鈎を放り投げ、城壁の窪みに引っ掛けた。
そして、軽々と壁を登っていく。
頂上に着き、エルマは街中の光景に愕然とした。

__……な、なにこれ?

頑丈な石造りの家が立ち並び、高い城壁が魔王軍の侵攻を妨げるのは理解出来る。
だが……。
町の住民が無気力以上の怠惰に溺れていた。
ヒドイ者は路上で寝ている……!!
今まで訪れたラダトームやドムドーラが普通に見えてくる程だった……。

エルマは、嘆息すると城門内側に降り立ち、ガチガチに固められた錠を、片端から外す。
彼女がトントンと内側から合図すると、エビルが巨大な城門を押した。

「アイリ……。
 悪いけど、この町、収穫なさそうよ?」
勇者アイリが城門を通りきるのを観とめ、エルマが報告する。
「……そうみたいね。」
勇者は中の様子を見て、思わず嘆息し項垂れた。
そして、皆の前に向き直る。

「あのね……。
 こんな目標、珍しいと思うのだけど……。
 本当は、言うのも恥ずかしい程なのだけど……。
 皆。取り敢えずココでは、『マトモに話が出来る人』を探しましょう……。」

アイリが申し訳なさそうに皆に告げると、仲間達は深々と頷き彼女に同意した。

せめて、宿屋や道具屋くらいは開いていてほしい……。
一行がそう願わずにはいられない程、
その街は荒廃しているようにも感じられたのだ……。
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