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『マイラの村』の宿屋。

疲労困憊し、ソファーで寝ていたアクシズは、やっと目を覚ました。
周囲を見回すと、カンダタが器用にも椅子に座ったまま寝息を立てている。

__……!!?

アクシズは、ベッドに視線を移し驚愕する。
何と、さっきまで寝ていたオルテガの姿がなくなっているではないか……!!?

「カ、カンダタ、起きろ!!!!」
アクシズは慌てて、カンダタを揺り起こす。
すると、彼は寝ぼけた表情で、面倒くさそうに目を擦る……。
「何だよ。
 いったい……。」

「オルテガさんが、居ない!!!!」

「なんだとぉぉぉ!!!?」
カンダタは驚愕して飛び起きると、ベッドに視線を移した。
アクシズは部屋を確認するが、オルテガの荷物も消えていた。
「ま、まさか……。」

__一人でゾーマを倒しに行ったのか……!?

アクシズは拳を握り締め、唇を噛んで悔やんだ。


『すまない……。
 君達を危険な目に合わせるつもりは無かった……。』


ふと、オルテガがこう言っていたのを思い出す。
サタンとの闘いでアクシズとカンダタは瀕死の重傷を負った。
オルテガはそのことで責任を感じ、一人で旅立ってしまったのだ……。

__本当に甘いのは、貴方のほうじゃないか……!!!!

アクシズは悔しさの余り、思わず目の前のテーブルを叩く。
加減したものの彼の腕力は強く、木製のテーブルはあっけなく崩壊する。

「追うぞ……!!」
「へ?」
俯いて、怒ったように言うアクシズに、カンダタは驚愕する。
「『ゾーマの城』に一番近い所は何処だ?」
「ココから南に位置する『リムルダール』だが、相当遠いぞ!?
 それに、アイリを捜さなくていいのかよ!!?」

カンダタのもっともな意見に、勇者は力なく項垂れる……。
「大丈夫。勇者オルテガは本当に強いからな。
 だけど、アイリはお前が守ってやらなければいけないだろ?」
「……。」
確かに、本当にアクシズが一番逢いたいのは、アイリである。
……だが。

若き勇者は唇を噛み、俯いたまま動けなかった。
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