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「アイリ。大変ですわ!!!!」
僧侶リオが狼狽し、思わず叫ぶ。

城砦都市メルキドに向けて、東へ進んでいる筈の勇者アイリ一行だったが、
何故か、ココで抜ける筈の道が一向に現れないではないか……!!
賢者ディートが、アイリから地図を受け取り、今までの経路を見直してみる。
……が。

「普通、迷路状になっている道って、
 下からじゃ現在地との照合不可能ですよね……?」

彼の『回りくどい発言』に一同は顔面蒼白になる。
要するに、完全に『迷った』ということだったらしい。

「……っど〜すんのよ!!!!
 今更引き返すなんて、あたしぜ〜〜〜ったい嫌よ!!!!」

盗賊エルマが、ディートに向かって怒鳴った。
怒ると怖い彼女だが、逆ギレというのも迷惑な話である。

ディートは狼狽しながら、頭を抱えた。
「ぼ、僕に怒っても、どうなるってもんじゃないでしょ?
 未開の地に入った可能性がありますから、ひょっとしたら何かあるかも……。」
「何もなかったら?」
どう責任とってくれる!? ……と言いたげに、エルマが彼を睨みつける。
これはもう、完全な『とばっちり』である……。

「まあ、まあ。」
そんな2人の間に割って入り、アイリは苦笑した。
「元々、私が悪いんだから、エルマさん。
 そんなに彼を責めないであげて。
 でも、確かに引き返すのは良くないかもね……。」

この先、何か収穫を得るためには、
未開の土地にも足を踏み入れておく必要がある……。

「ココにいるのも何だから、取り敢えず先へ進みましょう。
 ここから先は地図が無いから、壁に傷をつけて行けば何とかなるかも。」
アイリはそう言って、道具袋から『聖なるナイフ』を取り出し、
壁を引っかくと、今現在の場所の目印をつけた。

「アイリさん。こんな状況なのに、意外と冷静ですね……。」
ディートが、リオに小声で話しかける。
すると、彼女はクスクス笑って、こう答えた。

「だって私達、『謎解き』のプロフェショナルですもの♪
 こういった状況の時は、必ず『何か』があるって『勘』が教えているのですわ。」

確かに、勇者アイリは、頭の回転が速い。

戦闘では、男性である勇者アクシズや勇者オルテガの方が上かもしれないが、
勇者アイリは、慎重に、しかも『確実に勝てる方法』を取るのだった。
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『DQ3』外伝CONTENTS