<2>
マイラ地方西に位置する『ルビスの塔』。
勇者アクシズ、盗賊カンダタ、ミニモン(ミニデーモン)の3人は、
無事塔から抜け出し、ほっと胸を撫で下ろしていた。
しかし、あの勇者オルテガに助けられるとは……。
一同はやはり動揺を隠せない。
それより、アクシズには最も気になる事があった。

「記憶が無いとは、どういう事ですか……?」
いったい何処まで覚えているのだろうか?
アクシズは、オルテガが『自分の記憶が無い』と言っていたのを思い出し、本人に問う。

「私が目覚めた時は、既にこの世界にいた。
 『名前』と『闘い方』は解かるのだ……。
 何故か『呪文』もしっかり覚えているのに、自分の身元が解からない……。」
勇者オルテガはそう言って項垂れる。

要するに、『闘い方』を覚えているというのは、身体が覚えているのであって、
大脳が覚えている訳では無いのである。
しかし、『呪文』をしっかり覚えているというのはどういう訳か……。
ショックで部分的に記憶が飛んでいるだけの可能性もある。
もう一度、同じショックを与えるか、オルテガの娘・アイリがココにいれば、
直にでも思い出しそうなものだが……?

「オルテガさん。
 実は、貴方のむす。」
「よ、よせ!!!!」
アクシズは、取り敢えずアイリの現状を報告しようとして、突如カンダタに口を塞がれる。

カンダタはアクシズを、オルテガの傍から離し、険しい顔で窘める。
「お前なぁ……!!
 オルテガに『記憶が無い方が好都合』じゃねえのか……!?」
アクシズは、彼の『言葉の意味』が全く理解出来ない。
カンダタは嘆息したが、小さな声で説明を始める。
「アクシズ。お前、最初アイリが『勇者』に見えたか?」
「……いや。
 正直、アイリには闘って欲しくなかったが……。」
アクシズは、記憶を辿りながら答える。
カンダタは更に続ける。
「オルテガは『一人娘のアイリが勇者として旅している』なんて知らないぞ。
 こりゃ、『親父としてはそうとうショック』だと思うぞ……!?」

「……確かにそうだな……。」
力なく項垂れて、仕方なくアクシズはカンダタに同意する……。
カンダタはハンカチで、同情の涙を拭った。

一方……。
「?」
一人置かれたオルテガは、彼等の同情が全く解かっていないようである。
次へ
前へ
『DQ3』外伝CONTENTS