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マイラ地方西に位置する『ルビスの塔』。 勇者アクシズ、盗賊カンダタ、ミニモン(ミニデーモン)の3人は、 無事塔から抜け出し、ほっと胸を撫で下ろしていた。 しかし、あの勇者オルテガに助けられるとは……。 一同はやはり動揺を隠せない。 それより、アクシズには最も気になる事があった。 「記憶が無いとは、どういう事ですか……?」 いったい何処まで覚えているのだろうか? アクシズは、オルテガが『自分の記憶が無い』と言っていたのを思い出し、本人に問う。 「私が目覚めた時は、既にこの世界にいた。 『名前』と『闘い方』は解かるのだ……。 何故か『呪文』もしっかり覚えているのに、自分の身元が解からない……。」 勇者オルテガはそう言って項垂れる。 要するに、『闘い方』を覚えているというのは、身体が覚えているのであって、 大脳が覚えている訳では無いのである。 しかし、『呪文』をしっかり覚えているというのはどういう訳か……。 ショックで部分的に記憶が飛んでいるだけの可能性もある。 もう一度、同じショックを与えるか、オルテガの娘・アイリがココにいれば、 直にでも思い出しそうなものだが……? 「オルテガさん。 実は、貴方のむす。」 「よ、よせ!!!!」 アクシズは、取り敢えずアイリの現状を報告しようとして、突如カンダタに口を塞がれる。 カンダタはアクシズを、オルテガの傍から離し、険しい顔で窘める。 「お前なぁ……!! オルテガに『記憶が無い方が好都合』じゃねえのか……!?」 アクシズは、彼の『言葉の意味』が全く理解出来ない。 カンダタは嘆息したが、小さな声で説明を始める。 「アクシズ。お前、最初アイリが『勇者』に見えたか?」 「……いや。 正直、アイリには闘って欲しくなかったが……。」 アクシズは、記憶を辿りながら答える。 カンダタは更に続ける。 「オルテガは『一人娘のアイリが勇者として旅している』なんて知らないぞ。 こりゃ、『親父としてはそうとうショック』だと思うぞ……!?」 「……確かにそうだな……。」 力なく項垂れて、仕方なくアクシズはカンダタに同意する……。 カンダタはハンカチで、同情の涙を拭った。 一方……。 「?」 一人置かれたオルテガは、彼等の同情が全く解かっていないようである。 |
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