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「大丈夫か?」
大量の魔物を撃退させた剣士は、アクシズに優しく微笑みかけた。
カンダタがその剣士の顔を見て、思わず腰を抜かす。

「……オ、オ、オルテガ……!!?」

__……!!?

勇者オルテガは、カンダタの手を引いて助け起こすと、苦笑した。

「あいにく私には記憶が無いのだ……。
 でも、何故か会う人は皆、私を知っていてね……。」

アクシズは、呆然とオルテガを見つめていた。
40代後半の年齢ではあるが、整ったその顔立ちは凛々しく若々しい……。
しかも、雰囲気は暖かく、とても包容力がある。
……アイリの父親であり、父・サイモンの友人。
勇者オルテガは、そんな勇者アクシズに気が付き、徐に近づいてきた。
そして、アクシズの逞しい姿を称讃する。

「君は若いのに、とても強そうだな。
 名は何というんだい?」

「アクシズ。
 アクシズ・クラインです。」

「私はオルテガ。
 オルテガ・ヴァンベルトだ。
 宜しく。アクシズ君。」

オルテガに握手を求められ、アクシズは握手を返す。

やはり、本物らしい。
アクシズはあまりに突然すぎて、驚愕したまま動けない。
カンダタがそんなアクシズを見て、こんなことを考える。

__アイツ。自分の彼女の父親に会ってんだよな。
   そら、気まずいわな〜〜〜……。

もちろん、勇者アクシズ本人は違うことで動けないのだが、
カンダタの冷やかしの考えが、彼に聞こえる訳も無く、
一同は相変わらず唖然としているのだった。

だが、勇者アクシズが『ルビスの塔』から脱獄したことを、
魔王軍偵察部隊は見逃してはくれなかったのである……。
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