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砂漠の町『ドムドーラ』。
オアシスを囲むように住居が点在し、そこだけ緑が生えている。
地上界のイシスを彷彿とさせるが、それより規模はだいぶ小さい。

幸い、勇者アイリ達7人は、多少野生の魔物と遭遇したものの、
魔王軍の追っ手が来る事は無かった。
しかし、『勇者アイリ』が一行にいる限り、彼らはやってくる。
魔王軍にとっても、『アイリが美しい生娘』だった為、彼女を諦めきれないのだ。
魔物の彼らにとって、これ程『上質の生贄』は無いのである。

アイリ達は、『ドムドーラ』に入ると、それぞれに別れ、
『ゾーマの城の結界』を壊す為の手掛かりを探すことにした。
だが、住民達にソレを知るものはなく、
誰もが悲観的な意見を言うではないか。

__ここも、なのね……。

アイリは思わず嘆息し、項垂れる……。

……でも無理はない……。

彼らは難民でありながら逃げる事も許されず、
このまま死を待つしかないのだ。

アレフガルドの住民達も、
最初は何とか恐怖に立ち向かおうと努力したに違いなかった。

だが人間とは、年月が経つにつれ感覚が麻痺し、
その恐怖にも慣れてくるもの。

人間の持つ適応能力の高さが、逆に不幸を招いているのだった。

「ひひいいいいいいん!!!!」

不意に馬の嘶(いなな)きが町に響く。
ソレは丁度、情報収集の為、外へ出歩いていたリオの耳に届く。

「な、何ですの!?」
彼女は狼狽して周囲を見回す。
すると、馬小屋が目に入り、そこで繋がれている馬が暴れている。
しかも、その暴れ方が尋常ではない……!!

「ど、どう、どう、どう……うわ!!!!」
その暴れ馬を宥めていた青年が、馬の蹄(ひづめ)に蹴られ弾き飛ばされた!!
リオは慌てて、その青年に駆け寄ろうとしたが、今度は暴れ馬に道を塞がれる。

「ぶるるるる……!!!!」

だが、可愛いお嬢様とはいえ、歴戦の彼女のことだ。
リオは不敵な笑みを見せ両手を翳(かざ)し、呪文詠唱の構えを取った。

「私に向かって来るなんて、100万年早いですわ!!」

睡眠呪文『ラリホー』が放たれ、暴れ馬はあっけなく眠ってしまう。

青年は、突然現れたこの美少女僧侶の存在に、絶句してしまった……。
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『DQ3』外伝CONTENTS