暗闇で深い声がする。
誰かが呼んでいる……。

『……リ。アイリ……。』

__貴方は誰?

『……私?
 ……私はお前だ……。』

__……!?

アイリは毛布を翻し飛び起きた。
周囲を見回す。
仲間が寝息を立てている……。

__夢か……。

額に手を当て、記憶の中から『声の主』の正体を探るが……。
大魔王ゾーマとは違う。幼い頃聞いた父オルテガの声でもない。
それに、闇の中に見えたのは……。

__黒いドラゴン……。
<1>
「おはようですわ〜。」
アイリが起きたのを確認したリオは、欠伸を噛み殺しながら挨拶をした。
外は朝だというのに、相変わらずの闇だ。
アイリは、思わずため息をつく……。

彼女達は『ギアガの大穴』を通り、『地下世界アレフガルド』へ渡った。

だが、勇者アクシズは魔王軍幹部キング(キングヒドラ)の策略によって囚われの身となり、
大魔王ゾーマの城は、強力な結界に阻まれ、行く事が出来ない。
父・勇者オルテガに至っては、生きていたのは嬉しいが、『記憶喪失』だという……。

何もかも思い通りにはならないとは、このことであろうか……。

昨夜(と言っても一日中暗いのだが)の、不思議な黒竜の夢を、明確に思い出す。
しかも、その黒竜はアイリ自身だと言った……。

ふと、竜の女王の城で、エビルが言っていたことを思い出す。
アイリの一族が伝説の地竜の血を引いている事……。
(ちなみにこの話を、天竜クラインの血を引く筈の勇者アクシズは信じていないが、
 彼女はロマンチストな性格ゆえ、即座に受け入れたらしい……。)

そして夢の黒竜は、『地竜ヴァンベルト』本人ではなかったのだろうか……と……。
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