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「記憶がない〜〜〜〜〜〜!?」 アイリとリオが驚愕して同時に叫ぶ。 女性に連れてこられた先は、ラダトーム城内の休憩室。 医療所代わりになっていたのか、壁に点々と血が染みついている。 「ちょ……、こ、声が大きいです……!!」 女性に窘(たしな)められて、2人は黙る。 アイリは気を落ち着ける為に、一度深呼吸した。 「父が『記憶喪失』って本当なのですか?」 「はい。 全身大火傷を負っていて、ラダトーム城の前に倒れていたのです。 何とか一命を取り留めたのは良かったのですが、 ご自分の名前以外の記憶が一切無くなっていて……。 残念ですが……。」 女性はそう言って、アイリに詫びるように俯いた。 __そんな……。やっと会えると思ったのに……。 アイリは拳を握り締め、悔しそうに唇を噛んだ。 「アイリ……。」 度重なる不幸……。 リオは心配そうに幼馴染を見つめた。 「実の娘が、記憶を失った本人に会えば、あるいは……。」 女性は、突然思いついたように言う。 __!? 当然のことであるが、今まで悲観的になりすぎて、 とても簡単で大事な事に気が付いていない場合がある。 アイリはこの時、言われて初めて気が付いた。 そう。自分が父・オルテガに会えばいいのである!! 「それで、父は……?」 こうなったら、絶対会わねばならぬ。 父・オルテガの所在を確認する為、聞いてみる。 「大魔王ゾーマを倒せば、記憶が戻るかもしれない……。 そうおっしゃって、行ってしまいました……。 行き先は特に何も言っていませんでしたが……。」 __父さんも、ゾーマを倒す旅をしている……!? その『ゾーマの城』だが、強力な『魔法陣結界』に守られていて入れない筈である。 魔王軍が、何のために『勇者』を狙っているのか解からないが、 こちらも反撃する為に、準備を整えるべきであろう。 やはり、『結界』を解けば、自然と皆集まるのではないか……? アイリは不思議な確信を持ち始めていた。 |
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