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勇者アクシズを失い、7人になったパーティは、『ラダトーム』に向かっていた。 幼女リリムを助けたことで、その港の主(あるじ)が 勇者達にお礼として船を1艘分けてくれたのである。 「まったく皮肉な話よね……。 あいつ(アクシズ)の犠牲が、 あたし達の御褒美になっちゃうんだから……。」 船が対岸に着き、エルマがため息をつく。 後は、徒歩でラダトームに向かうこととなった。 アイリは聖域呪文『トヘロス』を詠唱する。 その甲斐あって、ある程度、 凶暴化した野生モンスターとの遭遇を防ぐことが出来た。 今、7人パーティのリーダーは、勇者アイリである。 魔王軍幹部との戦闘は、アクシズ側のパーティにも、 彼女の実力を認めさせる結果となった。 ある意味、アイリは彼等の『最後の希望』となってしまった……。 しかし、彼女自身は、悲しみと喜びの混じった複雑な感情に苛まれていた。 父・勇者オルテガが生きていた。 だが、同時に恋人・勇者アクシズを魔王軍に奪われた。 両者ともアイリにとって、かけがえの無い大切な存在である。 いったい、自分はこの感情を何処に持って行けば良いのだろうか……。 「あ、『お城』が見えてきましたわよ!!」 リオが前方を指差し元気に叫ぶ。 「直ぐ対岸に『大魔王の城』があるって聞いていた割に、まともね。」 エルマがほっと胸を撫で下ろす。……が。 「あ、あれが噂の『大魔王の城』ですか!?」 ディートが狼狽しながら皆に確認する。 一同はラダトームと対岸に位置する『ゾーマの城』を目にして驚愕した。 城には、島ごと天まで延びる、『立体魔法陣の結界』が張られており、 とても入れる状況ではなかったのである。 ……と、一羽の迷い鳥が飛んでくる。 その鳥は結界にぶつかると、瞬時に焼け落ちてしまった。 __……!!? 「あんな『巨大な結界』、僕じゃ何年かかっても構築出来ないですよ……。 大魔王ゾーマって天才すぎる……。」 「何、変な感心をしている……。」 項垂れる賢者ディートを、エビルが白い目で見る。 __先ずは、あの『結界』を壊さなければならない……。 勇者アイリは、対岸の『ゾーマの城』を見て、次の目標を決める。 何か別の方法がある筈である。 それは、彼女自身の経験と勘が教えていた。 これまでに彼女は、数々の『封印』を解いてきた……。 これは、勇者アイリの、他には無い特殊能力の1つだったのである。 |
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