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「勇者様。 食べないの?」 お世話係りに起用されていた、まだ子供のミニデーモンが心配そうに問う。 マイラ地方、西に位置する『ルビスの塔』。 ここの一室で、勇者アクシズは監禁されている。 サタンが敢えてココを選んだ理由は、この塔は元々ゾーマ本人が構築したもので、 『聖なる力を抑える効力』があるからである。 つまり、アクシズは内に秘める潜在能力すら封印されていた。 「……。」 勇者は腕を組み、壁に背中をつけて座ったまま、 目を閉じて沈黙している。 「……。」 ミニデーモンも、同じように彼の隣に座ってみる。 __……〜〜〜〜!!!! 「真似するな!!」 「えへへ〜♪」 アクシズが大げさに怒ると、ミニデーモンはいたずらっぽく舌を出す。 勇者は、無邪気な魔物に嘆息する。 「勇者様、食べないの? 食べないと死んじゃうよ?」 ミニデーモンは何故か瞳をウルウルさせ、泣きそうな顔をする。 「……本当に、俺に死なれたら困るらしいな……。」 アクシズはその表情に脱力する……。 __仕方ない……暇つぶしにからかってみるか……。 「そうか、まだ『餓死』って手があったな!!!!」 「え〜〜〜〜!!!!?」 ミニデーモンは驚愕し、アクシズの袖を掴んで「駄目、駄目。」と首を大げさに振る。 「勇者様死んじゃ駄目〜〜〜〜!!!!」 何と、度が過ぎたのか泣き出してしまったではないか!! 「……悪い。ちょっとやりすぎた……。」 苦笑いしながら、号泣する魔物の頭を撫でる。 __まったく、サタンって変わった奴だよな……。 魔王軍幹部としては、申し分ない実力だったが、根が真面目なのであろう。 しかも、勇者アクシズが無抵抗な魔物を倒せないのを知って、 お世話係に魔物の子供をよこしてきたのだ。 「分かった。食べるよ。」 「……本当?」 「ああ、大丈夫。」 アクシズに微笑まれて安心したのか、ミニデーモンは扉を出て行こうとして、 ……と、思い出したように振り向く。 「あの……。」 「大丈夫。逃げないから。」 勇者は、苦笑いして答えた。 慈悲の篭った『策略』なんてもっと汚いじゃないか……!! サタンに一味違う敗北感を感じ、アクシズは嘆息し項垂れた。 |
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