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「安心しろ。
 ゾーマ様はまだ、お前を生贄にはしないらしい……。」
サタンが、勇者アクシズに話しかける。

アクシズは、今はゾーマ城にいるわけではなく、ルビスの塔に監禁されていた。
別に、手枷、足枷をつけているわけでもなく、逃げようと思えば逃げられる。
だが、何故か彼は逃げなかった。
それ以前に手枷・足枷などつけても、直ぐに腕力で外されてしまうだろうが……。

「お前は、他の魔王軍とは違うのだな……。」
アクシズは、敵とはいえサタンに普通に話しかける。
「私は、卑怯な真似が一番嫌いだ……。
 『クライン』親子が同じ目に遭うのを見ていられなかった……。」
魔王軍らしからぬ発言に、勇者の表情が緩む。
さっきまでタイマン勝負を張っていた相手だとは思えない……。

「この塔はいったい何なんだ?」
「それは、言えない。」
サタンが告げると、仕方ないとアクシズは納得する。
「俺は、一応捕虜だからな……。
 ちょっと、図々し過ぎたか……。」
「いったい、何時まで捕虜でいてくれるか、
 私は不安だがな……。」

__はは。見透かされている……。

アクシズは苦笑した。
「見張りはお前か?」
「不服か?」
「剣、置いてくるんじゃなかったな〜……。」

「……。」
変な間が空き、気まずい沈黙。

「ちなみに、『静寂の玉』でお前の呪文は封じてあるぞ。」

__……脱出呪文『リレミト』が使えない……。

若き勇者は思わず項垂れる。
「私は、長い事『勇者アクシズ追跡担当』だったのだ。
 今更、逃げられてたまるか!!!!」
サタンは一喝すると、部屋から出て行き鍵をかけた。

彼がいなくなったのを見計らって、アクシズは自分の身を調べる。
だが、ハンター時代から服の間に挟んでいた短剣や、
仕込み武器等が全て没収されていた。
しかも、もしもの時に備えて、自己犠牲呪文『メガンテ』も覚えているのだが、
呪文も封じられている。

__自害もさせないってわけだ……。

地下世界に来たのは良かったのだが、予定通りいかないものらしい。
今回は、キングに完全に裏をかかれたのであった。
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