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「あいつら、汚いですよ……。
 どうして、どうして……。」
ディートが地面を叩きながら、涙を流す。
「まだ、アクシズが死ぬと決まったわけじゃないのよ!!!!
 あいつ策士なんだから、内部からやっつけてくれるわよ!!!!」
そう言いながら、エルマも涙を隠せない……。
エビルは、沈黙したまま俯いて動かない。
勇者であり、パーティのリーダーを失うことが、これ程ダメージになるとは……。

彼らと同様、アイリも動けずにいる。
勇者アクシズが残した剣は鞘ごと置いてある。
おそらく、今の彼は丸腰だろう。
それでも、彼らに抵抗出来る実力はある筈である。
自ら命を無駄にするようなことは、きっとしない。
自分が信じなくて誰が、彼を信じるのだろう?

「……皆。」
アイリは、項垂れるディート達の前に立ち、凛とした表情で諭す。

「信じましょう。
 アクシズは私達に『さよなら』とは言ってなかったのよ。
 きっと生きているわ。」

その彼女の強い表情に、ディートは驚愕する。
一番辛いのは、アクシズの恋人である、アイリのはず……。
一番愛する人が、目の前からいなくなってしまったのだ……。
しかし、そのアイリは彼の生存を信じようとしている。
ディートは涙を拭い、徐に立ち上がった。

「そうですね……。
 アイリさんが頑張っているのに、僕らが泣いていちゃ変ですよね。」
彼は無理にでも笑顔を作り微笑んだ。

ふと、後ろを振り向くと、リオが何も言わずにディートを見つめている。
普段あれ程自分を圧倒するような勢いで、
猛アタックしてくる少女がおとなしい……。
ディートはリオに向かって苦笑した。
「もしかして、僕に幻滅しました?」
彼女は顔を真っ赤にし、首をぶんぶん横に振って、必死に否定する。

__そ、そうじゃないですわ……。アイリの為に私も我慢しないと……。

本当は、凄く嬉しいことを言われている筈だが、時期が悪すぎた……。
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『DQ3』外伝CONTENTS