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キングにリリムを人質に取られ、勇者アイリは身動きが取れない……。
「やめて……!!
 その子は関係ないわ!!!!」

アイリとキングの戦闘に変化が生じ、アクシズとサタンが闘いの手を止める。
両者共々その光景に驚愕する。

__キング……。お前という奴は……!!!!

この、魔族の面汚しが……!!
サタンは、拳を握り締め唇を噛んだ。
キングが周囲を見回し、一同が固まったように止まっているのを見て、高笑いをする。
さも、それが面白いといわんばかりに……。

__狂っている……。

アイリは、背筋に寒気を感じ、この場から逃げたくなる衝動を必死に堪えていた。

「……お前達の要求は何だ!?」
アクシズは怒りでどうにかなりそうな自分を必死で抑え、搾り出すような声でキングに問う。
「簡単ですよ。
 『勇者』が、我々と共に来てくだされば問題ないのです。
 それに、私がコノ子を殺しちゃっても、
 そちらの可愛い僧侶さんの『ザオリク』で生き返れるでしょ?」
「……どっちにしろ、殺すつもりなんだな……?」
「さ〜あ、それは分かりませんよ?
 試してみますか?」

アクシズは、アイリに視線を移す。
彼女は二の腕を抱き締めて、必死に震えを堪えている。
彼は周囲を見回し、今度はディートに目線を移した。
目が合う。
ディートは、首を横に振る。彼の目に涙が溢れ出す。
「だ、駄目ですよ……。駄目ですよ、アクシズ!!」
しかし、一度決めたら覆すような男ではない……。
勇者アクシズは幼馴染に向かって、少し微笑んだ。
そして、キングに向き直る。

「俺と、その子を交換すれば、最高じゃないのか?
 お前達は手柄を稼げる。」

「非常に、良い心がけですよ、勇者アクシズ。
 勇者アイリも欲しいところですが、欲張っちゃ駄目ですからね♪
 そういうとこ、本当、貴方の父親そっくりですね〜♪」

そう、かつてアクシズの父・勇者サイモンも、偽サマンオサ王に全国民を人質に取られ、
その身を犠牲にしていた。
今度は、その息子が人質に代わってその身を犠牲にしようしている。
サタンは敵ながらも、そんな親子に同情を禁じえなかった。

__駄目……。行かないで……。

アイリは震えが止まらない身体を、必死に動かそうとした。
なんと声すら出ない。自分は今、大変絶望的な事態に直面しているというのに……。
嗚咽と共に涙が溢れた。

勇者アクシズは自分の剣を鞘ごと下に置くと、徐に歩み寄り、キングとサタンの前に立った。
キングに捕まっていた幼女は瞬時に解放され、エビルの目の前に転送される。
エビルは、幼女を慌てて抱き抱えながら、友の名を呼ぶ。

「アクシズ!!」
最後の最後で、やっとアイリの口から言葉が出た。
その声に、アクシズが振り返る。
最後に彼女を愛しそうに見つめ、優しい顔で微笑んだ。
そして、彼らは姿を消した。
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『DQ3』外伝CONTENTS