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「8対2か。」
サタンが、片手を翳(かざ)し宙から愛用の槍を出現させる。
彼はそれを握り締めると、2、3度回転させ槍術の構えを取る。

一方、キングは同様に宙から巨大な『死神の鎌』を出現させ、
一度振りかざしてから構えを取る。
その姿はまるで、本物の『死神』のようだ……。

__構えに隙が無い……。さすがは魔王軍幹部ってとこか……。

アクシズは嘆息したが、自分も腰の長剣を抜き身構える。
待ち伏せは、ある程度予測出来たが……。
いざ、蓋を開けてみれば、いきなりの高レベルな戦闘である。
仲間は自分の指示を待っている……!!

「キング……。『勇者』は殺すなよ。」
サタンが言う。隣接した仲間内で聞こえる程度の会話だ。
だが、必要以上に敏感になっていたアクシズは、その一言を聞き逃さなかった。

__俺とアイリは、殺す気がないのか……?

もしかしたら……。
アクシズは瞬時に次の行動を決定する。
「皆は、手を出すな……!!
 『俺達』だけで行く!!
 アイリ……!!
 いくぞ!!」

彼の言葉にアイリは一瞬驚愕したが、直ぐ体勢を整え身構えた。
少なくとも、このパーティ内では最強の勇者2人であろう。

「私達を、馬鹿にしているのか!?」
サタンがアクシズに飛び掛る。
槍と剣が交差し、凄まじい打ち合いとなった。

「アクシズ!!」
「おっと、貴女の相手は私ですよ〜♪」
「!?」
アイリはキングの殺気を感じ、思わず後方へ飛びのいた。
振り下ろされる鎌を、華麗な剣捌きで受け止めては返す。

__やはりな……。加減している。

アクシズは、サタンの突きの間をぬって、その脇腹に体当たりした。
肩が擦り切れて血が滲む。
だが、サタンの体勢を崩すのには十分だった。
アクシズはそのまま上段の構えから勢いよく剣を振り下ろすが、あと一歩で避けられる。

アイリは剣を横に薙ぎ払った。
剣の切っ先がキングのフードを破り、その顔を露にする。
それは面長の青白い人間の男の顔で、異常なほど冷たい目をしている。
初対面の筈だが、アイリにはその目に見覚えがあった……!!

__……『八叉ノ大蛇』と同じ目……!?

一旦間合いを取る為、お互い後ろに引く。
アイリは体勢を整え、キングを睨み付けた。
キングは相変わらず余裕の冷たい嘲笑を見せる。

「どうして、誰も加勢しないんですの!?」
勇者2人は相変わらず、凄まじいタイマン勝負を続けている。
それを仲間達は、ただ見ているだけとは……。
リオは焦れて騒いだ。
だが、直ぐにエルマに口を塞がれる。
「あたし達じゃ足手まといなのよ……。」
「……で、でも、どうするんですの?
 このままだと、アイリも、アクシズ様も力尽きちゃいますわ。」

確かに、勇者2人は防御に徹するばかりで、
未だ相手に致命傷を与えるような攻撃に至っていない。
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『DQ3』外伝CONTENTS