「ごめんね……。お母さん……。」

アイリはこの日、初めて母に嘘をついた。
家族が寝静まる深夜、静かに自宅を後にする……。

__私には、まだ『やること』があるの……。

そう……。
彼女に課せられた使命とは『大魔王ゾーマ』討伐……。
<1>
ネクロゴンド地方、『ギアガの大穴』。
アイリは不死鳥ラーミアと共に、この地へ降り立った。

「今まで、ありがとう。ラーミア……。」

愛しそうに、不死鳥の喉を撫でる。
くうう……と、一鳴きするとラーミアは羽ばたき、
再び空へ舞い上がった。

__いっちゃった……。

ラーミアを見送った後、
『ギアガの大穴』の崩れた城壁内では、既に仲間が待っていた。

「覚悟は出来たか?」
と、大型モンスター・バラモスエビルのエビルが聞いてくる。

「アイリだけに怖い思いさせませんわ!!」
僧侶リオは凛とした微笑を見せる。

「ここからは、誤魔化しは効きませんよ?」
すっかり武装した賢者ディートが諭す。

「せいぜい、足手まといにならないようにしなさいよ。」
面倒くさそうに、盗賊エルマ。

「それって、ウチに言ってるん!?」
エルマの発言に、商人ミーナが突っ込みを入れる。

「まだ、究極の酒に会ってないからな。」
と、戦士クリスが微笑む。

皆、自分なりの覚悟を背負ってここまでやって来たのだ……。
最後に勇者アクシズが、アイリの傍まで近づいて来る。
そして、彼女の正面に立ち、瞳を真っ直ぐ見つめる。

「アクシズ……。」
「いいか。ここから先は魔王軍との戦争だ。
 俺も、何処までお前を守ってやれるか分からない。」

つまり、勇者アクシズ達も、
勇者アイリ達と一緒に闘ってくれるということだ。

アイリは、嬉しそうに微笑んで頷いた。
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