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「どうした?」

『竜の女王の城』城内に入るや否や、エビルが驚愕する。
護衛のホビットや、喋る馬、エルフ達が皆、泣いている。

「おお、おいたわしや……。」
「何があったのだ?」
エビルが、嘆くホビットを問い質す。

「女王様はご病気なのだ……。
 余命幾許も無い。
 なのに卵を抱えていらっしゃる……。
 無事にお産み出来たら良いが、それでは女王様はどうなってしまうのか……。」
意外とベラベラと喋るホビットに呆れつつ、エビルはため息をつく。

アイリは驚愕した。
自分も女だから本能的に理解出来る。
竜の女王が出産に失敗すれば、赤子は生きられないかもしれない。
だが、彼女が出産に成功しても、弱り果てた母体の命の安全の保証は無い。
それが、どれほど危険な綱渡りであるか……。

「女王は何処ですか?」

アイリが慌ててホビットを捕まえて聞くと、
彼は女王の寝室の位置を指差した。
彼女はその方向をキッと睨むと、
周囲が止めるのも聞かず駆けて行く。
エビルもその後を追う。

そして、寝室に着き……。
その姿を見て、アイリは哀しくなった。

そこには一頭のドラゴンではなく、一人の女性がいたのだから……。
姿は人間に似ているが、人間ではない。
ドラゴンの名残を纏(まと)っていても、その容姿は美しい女性であった。

__苦しそう……。

アイリの頬に涙が伝う。
これから女王に訪れる試練を思うと、心が痛くなる。
……命を授かる奇跡は『喜び』の筈(はず)ではなかったのか……。

「……私の為に、泣いてくれるのですか?」
竜の女王が、勇者アイリの姿に気付き、身を起こす。
ベッドに近づくと、女王はその冷たい手で彼女の頬に触れた。
「ありがとう……。
 ……貴女は優しい人ね……。」
竜の女王が優しい微笑みを見せる度に、
アイリの瞳から止め処なく涙が溢れる。

そこに丁度エビルが到着し、アイリがどうして泣いているのかと驚愕する。
「女王様?」
エビルが狼狽しながら、真相を尋ねる。

すると、竜の女王は微笑みながら。
「エビル……。貴方は人間を見る目があるのですね……。
 ……優しい子ばかり連れてきて……。」
と、温かく包み込むような声で返してきた。

「は、はあ……。」
エビルはほとんど訳が分からなかったが、
女王がアクシズとアイリを『優しい子』と言っているというのは理解出来たらしい。
彼は頭を掻いて、曖昧(あいまい)な返事をするしかなかった。
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『DQ3』外伝CONTENTS