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「私は、彼等(魔物達)の支えを奪ってしまった……。」 アイリは力なく項垂れる。 「奴も本望だったのではないか?」 意外なエビルの答え。 「え……?」 思わず驚愕する。 「奴は、本当にプライドが高いからな。 ゾーマの下で犬死するよりは、 立派な勇者に真正面から倒された方が名誉に傷がつかないだろう。」 立派な勇者と言われ、アイリは顔が熱くなる。 「そういえば、お前。 ラストネーム(日本語に訳すと苗字)は何といった?」 「『ヴァンベルト』……。」 __やはりな……。 エビルは一人で納得している。 アイリはさっぱり訳が分からない。 「『キメラの翼』は持っているか?」 「う、うん。 道具袋に何個か……。」 「私は『ルーラ』が使えない。 だが、場所は私でなければ行けない。」 「何処に行くの?」 巨体の魔物である彼に、『キメラの翼』を渡しアイリが質問する。 「地上界にて、天界に一番近い所だ。」 言うが早いか、エビルはアイリの腕を掴み『キメラの翼』を空に放り投げた。 彼等の足元に、瞬間転移呪文『ルーラ』と同様の魔方陣が描かれ、 その身が一瞬で転送される。 やがて、別の場所で転送時と同じ姿で現れる。 「ついたぞ。」 慣れ親しんでいるのか、エビルが当然のように言う。 しかしアイリは、その光景に目を奪われずにはいられなかった。 天空に向けて聳(そび)え立つ、白い居城……。 所々に、竜神のレリーフが施されており、どこか近寄りがたい品がある。 レリーフには3種類のドラゴンの姿があり、そのうち1つは見覚えがあった。 __『ヴァンベルト』家の紋章と同じ……。 確か同じ『竜の紋章の盾』を持っていた筈……。 今現在、その盾はアリアハンの実家に置いてある。 「アイリ。 間違いなく、お前なら会ってくれるぞ。」 「何故?」 「『ヴァンベルト』は伝説の『地竜』の名だ。 ちなみに『クライン』は『天竜』なのだがな。 あと全てを統べる『神竜』もいる。」 要するに『アイリがその地竜と同族』だから会ってくれるというのだ。 アイリは、まるで過去に読んだ童話のような話に、唖然としている。 「普通の人間だったら、嫌がられるのだがな。 アイリ。お前なら別だ。アクシズと同様にな。」 「アクシズもココに?」 「ああ。奴がまだ子供の時に連れてきた。 だが、竜の女王が人間の元に返した方がいいと言ってな。 その後、ダーマ神殿に連れて行ってやったのだ。 私の姿を見ても驚かないのは、あの大神官バサラくらいだからな。」 きっと、危険なサマンオサから逃げていたところを、 たまたま地上界に降りていたエビルに救われたのであろう。 それもアクシズのラストネームが『クライン』だった為に、 いきなりコノ城に連れて行くとは……。 あまりにも魔物らしい発想である。 __でも、私も不死鳥ラーミアを復活させているから、 あまり不思議がると変よね……? これ以上、不思議なことが起こっても、それは不思議ではない。 「行きましょう。エビル。」 「おう。」 そう。彼女の性格はロマンチスト。 だから、この状況は、とても受け入れやすかった……。 しかし、その城内では受け入れ難い事件が待っていたのである。 |
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