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翌日。 絵に描いたような晴天である。 凱旋パーティの主役ということで、 アイリは一足早くアリアハン城内についていた。 「アイリ〜!!」 幼馴染のカルチェがアイリの姿を見つけて一目散に駆けてくる。 彼女は城勤めのメイドだった。 「美味しい料理、腕奮っていっぱい作るからね!!」 「あは。ありがと、カルチェ。」 次は料理長が顔を見せてきた。 料理長はアイリに両手で握手し、今度はカルチェに向き直る。 「カルチェ。今日は仕事いいから、 アイリさんの話し相手になってやんなさい。 アイリさんも仲間待ちの間は退屈でしょう。」 そう言って片目を閉じた。 会場に人が集まり出して来た。 「まだ、アイリの仲間来ないね。」 「きっと皆、準備に忙しいのよ。」 「なんじゃ、まだ、リオ達はきとらんのか。」 エクル大臣がアイリの傍に来て呟いた。 「まあいいわい。後から紹介するような形でしよう。時間じゃからな。」 大臣の言葉に国王も頷いた。 それを合図に一斉にファンファーレが鳴り響いた。 ……と、同時に城内が暗くなる。 来賓達は、これも演出なのかとざわつきだす。 会場内に闇が集まり段々形を成していく。 アイリや王を含め、あまりの出来事に困惑して皆声が出ない。 『お楽しみのところ、邪魔して申し訳ない。』 なんと、それは語り始めた。 闇は完全に固まり、巨大な三つ目の王となる。 「な、なにあれ…?」 カルチェが、沈黙を破ると、その三つ目の王はアイリを凝視した。 「!?」 アイリは邪悪な気を感じて本能的に身構える。 ただごとではない。ただごとでは……! 『我は大魔王ゾーマ。 我こそは闇の王なり。 魔王バラモスは我が臣下。 我が手下を葬ったところで何も変わらない。 これが、どういう意味かわかるな?』 国王は驚愕し震撼した。 アイリは目を見開いたまま、 事実を飲み込むのに必死で動けない……。 『しかし、その功績は称えよう……。』 闇が笑った気がした。 その瞬間……。 どおおおおおおおおおん!!!! 凄まじい爆音が響き黒い稲妻が会場を焦がす。 そう、アイリは間に合わなかった。 灰になったカルチェを……。 会場に集まった王、大臣を除く全ての人々を……。 皆、目の前で灰と化してしまった……。 誰一人助けられなかった……。 『おやおや、加減したのだがな……。 お前のせいだぞ。勇者アイリ。 お前のせいで皆死んだ。』 アイリはがくっと膝(ひざ)を突き、 おそるおそる灰になったカルチェに触れた。 明るい笑顔の幼馴染は一瞬にいなくなってしまった……。 もう、彼女は笑ってくれない…。 自分の為に料理を奮うと言ってくれない……。 『地下世界アレフガルドへ来い。 勇者アイリ。 そして我が生贄となれ!! ふははははははは!!!!』 闇は勝ち誇った笑い声を残して消えた。 周囲が明るくなり、惨状がはっきり見える。 アイリは絶叫した。 |
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