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アリアハン城は翌日の勇者凱旋パーティの準備で大賑わいだった。
リオが、自分の祖父のエクル大臣に促したからである。

「リオール、美しいぞぉ〜。」

エクル大臣が泣きながら正装のリオを褒める。

「もお、おじい様ったら大げさですわ。」

どうやら2年間ほったらかしていたのは、
アイリだけではなかったらしい。
事実、リオはこの爺馬鹿に所在が知れるのを恐れて、
手紙を一通も自宅に寄こしていなかったのだ。
エクル大臣は手持ちのハンカチでしきりに鼻を咬みながら、
まだ感激の涙を流している。

__それにしても、ディート様は何処(どこ)にいるのでしょう……。

リオは凱旋パーティにアクシズ達も呼ぶつもりだったが、
彼等の足跡は相変わらず途絶えたままで、所在がわからなかった。
彼らは元々魔王軍の追跡を撒(ま)くほどの戦略で動いているのだから、
並みの人間が所在を追跡できるわけがないのだが、
リオにはそれがまったく理解出来ないらしい……。

アイリの自宅に、早くもリオから特製のドレスが届けられた。
紺色のベルベットで誂(あつら)えた美しい飾り気のないドレスだ。
アイリの母、ルシアが配達員にお礼を言いチップを渡すと、
彼は一礼して去っていった。

ルシアは食卓に座って紅茶を啜(すす)る一人娘に包みを渡す。
「すごい、可愛い!!」
包みを開けると、アイリは普通の少女に戻って喜んだ。
そして、愛しそうにドレスを抱きしめる。
「リオ、ありがとう〜♪」
ルシアはそんな娘を目細めて見守った。

数時間前、アイリは無事帰還した。
ルシアが玄関を開けると、
旅から帰ったアイリが抱きついてきたのである。

「母さん、ただいま……。」
「おかえり……、おかえりアイリ……。」
母子の抱擁を目にし、祖父ガウルはもらい泣きしながら、
「うん。うん。」と頷いていたのだった。

「アイリ……。」

ルシアは愛情込めて娘の名を呼んだ。
そして、ずっと言いたかった言葉を放つ。

「もう、剣を持たなくていいからね……。」

微笑んで頷く愛娘を母は強く抱きしめた。
強く……。
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『DQ3』外伝CONTENTS