<3> | ||
アリアハン城は翌日の勇者凱旋パーティの準備で大賑わいだった。 リオが、自分の祖父のエクル大臣に促したからである。 「リオール、美しいぞぉ〜。」 エクル大臣が泣きながら正装のリオを褒める。 「もお、おじい様ったら大げさですわ。」 どうやら2年間ほったらかしていたのは、 アイリだけではなかったらしい。 事実、リオはこの爺馬鹿に所在が知れるのを恐れて、 手紙を一通も自宅に寄こしていなかったのだ。 エクル大臣は手持ちのハンカチでしきりに鼻を咬みながら、 まだ感激の涙を流している。 __それにしても、ディート様は何処(どこ)にいるのでしょう……。 リオは凱旋パーティにアクシズ達も呼ぶつもりだったが、 彼等の足跡は相変わらず途絶えたままで、所在がわからなかった。 彼らは元々魔王軍の追跡を撒(ま)くほどの戦略で動いているのだから、 並みの人間が所在を追跡できるわけがないのだが、 リオにはそれがまったく理解出来ないらしい……。 アイリの自宅に、早くもリオから特製のドレスが届けられた。 紺色のベルベットで誂(あつら)えた美しい飾り気のないドレスだ。 アイリの母、ルシアが配達員にお礼を言いチップを渡すと、 彼は一礼して去っていった。 ルシアは食卓に座って紅茶を啜(すす)る一人娘に包みを渡す。 「すごい、可愛い!!」 包みを開けると、アイリは普通の少女に戻って喜んだ。 そして、愛しそうにドレスを抱きしめる。 「リオ、ありがとう〜♪」 ルシアはそんな娘を目細めて見守った。 数時間前、アイリは無事帰還した。 ルシアが玄関を開けると、 旅から帰ったアイリが抱きついてきたのである。 「母さん、ただいま……。」 「おかえり……、おかえりアイリ……。」 母子の抱擁を目にし、祖父ガウルはもらい泣きしながら、 「うん。うん。」と頷いていたのだった。 「アイリ……。」 ルシアは愛情込めて娘の名を呼んだ。 そして、ずっと言いたかった言葉を放つ。 「もう、剣を持たなくていいからね……。」 微笑んで頷く愛娘を母は強く抱きしめた。 強く……。 |
||
■次へ ■前へ ■『DQ3』外伝CONTENTS |