アリアハン大陸に木枯らしが吹く。
季節はもうすぐ冬を迎えようとしていた。
<1>
__勇者アイリが魔王バラモスを倒した。

伝書鳩の知らせは、瞬く間に人々の間に広がり町は歓喜の渦と化す。
今まで活気を失っていた町が再び希望を取り戻したのだ。
町中の人々が勇者アイリの凱旋(がいせん)を喜び、
感謝と尊敬と称讃の言葉を放った。

「照れますね〜。もお皆さん褒めすぎですよお〜……。」
リオが独特の圧迫感に溜まりかねてアイリに耳打ちする。
褒められ飽きたといったら変だが、正直そうなのだ。
「そうね。もうお腹いっぱいって感じかな……。」
アイリは苦笑して答える。

「アイリは一旦家に戻るのか?」
と、今度はクリス。

隣のミーナはもっと褒めてと言わんばかりに、
ギャラリー相手に手を振っている。

「うん。一番に母さんに報告したいしね。
 それから王様に報告するわ。」
「じゃあ、明日、城で落合うことにしよう。」
「せや。アイリはいっぱ〜いお袋さんに甘えてき〜♪
 2年もほったらかしとったんやろ。」
嬉々としてミーナがアイリとクリスの間に割って入り肩を組む。

一方、リオは慣れない人だかりにゲンナリしている。
「……そうしましょう、アイリ。私、もう限界ですう〜……。」
「あはは。ごめんね。リオ、大丈夫?」
アイリはリオの片腕を取って支えた。

「それじゃ、皆一旦解散ね。」
アイリの言葉に他の3人が頷いた。

__もう……、大丈夫ね……。

アイリは仲間を見送った後、一人取り残された。

__これからどうしよう……。

そういえば、リオが魔王バラモス討伐後の、
お嫁の貰い手を心配していたことを思い出し、
アイリは苦笑する。
ふと同時に、若き勇者アクシズのことが脳裏を過ぎった。
彼とはサマンオサで別れてから会っていない……。
唯一不思議だったのは、
彼が魔王バラモス退治に全く加担しなかったことだが……。
しかし、今のアイリにはソレを疑問に思う必要も無かった。

__母さん、元気かな。

温かい期待が彼女の心を満たす。
これからやりたいことを色々考えるのが、
こんなに楽しいことだと今更ながら痛感してしまう。
これからは城下の人々と同じように、
普通の娘のように生きることが許されるのだ。
アイリはそのことを心から信じた。

残酷なまでに、純粋な心で……。

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『DQ3』外伝CONTENTS