アリアハン大陸に木枯らしが吹く。 季節はもうすぐ冬を迎えようとしていた。 |
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__勇者アイリが魔王バラモスを倒した。 伝書鳩の知らせは、瞬く間に人々の間に広がり町は歓喜の渦と化す。 今まで活気を失っていた町が再び希望を取り戻したのだ。 町中の人々が勇者アイリの凱旋(がいせん)を喜び、 感謝と尊敬と称讃の言葉を放った。 「照れますね〜。もお皆さん褒めすぎですよお〜……。」 リオが独特の圧迫感に溜まりかねてアイリに耳打ちする。 褒められ飽きたといったら変だが、正直そうなのだ。 「そうね。もうお腹いっぱいって感じかな……。」 アイリは苦笑して答える。 「アイリは一旦家に戻るのか?」 と、今度はクリス。 隣のミーナはもっと褒めてと言わんばかりに、 ギャラリー相手に手を振っている。 「うん。一番に母さんに報告したいしね。 それから王様に報告するわ。」 「じゃあ、明日、城で落合うことにしよう。」 「せや。アイリはいっぱ〜いお袋さんに甘えてき〜♪ 2年もほったらかしとったんやろ。」 嬉々としてミーナがアイリとクリスの間に割って入り肩を組む。 一方、リオは慣れない人だかりにゲンナリしている。 「……そうしましょう、アイリ。私、もう限界ですう〜……。」 「あはは。ごめんね。リオ、大丈夫?」 アイリはリオの片腕を取って支えた。 「それじゃ、皆一旦解散ね。」 アイリの言葉に他の3人が頷いた。 __もう……、大丈夫ね……。 アイリは仲間を見送った後、一人取り残された。 __これからどうしよう……。 そういえば、リオが魔王バラモス討伐後の、 お嫁の貰い手を心配していたことを思い出し、 アイリは苦笑する。 ふと同時に、若き勇者アクシズのことが脳裏を過ぎった。 彼とはサマンオサで別れてから会っていない……。 唯一不思議だったのは、 彼が魔王バラモス退治に全く加担しなかったことだが……。 しかし、今のアイリにはソレを疑問に思う必要も無かった。 __母さん、元気かな。 温かい期待が彼女の心を満たす。 これからやりたいことを色々考えるのが、 こんなに楽しいことだと今更ながら痛感してしまう。 これからは城下の人々と同じように、 普通の娘のように生きることが許されるのだ。 アイリはそのことを心から信じた。 残酷なまでに、純粋な心で……。 |
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